郡庁に環境室設置される(日本研修の目に見える成果)
2003.7.29
草野 孝久
ケニンガウの郡庁に環境セクションが新設されました。クロッカー山脈公園を取り囲む8つの郡の中で初めてのことです。この環境室の整備と活動を手伝う青年協力隊員(JOCV)が要請されました。

サバ州は行政区が27のディストリクト(郡)に分けられています。人口は数万人から数十万人まで様々で、日本の市と同じような行政単位と理解して良いです。ディストリクト・オフィスは、私たちは郡庁と訳していますが、市役所と同じような役割を果たします。いくつかの支所を持つ郡庁もあります。この郡の下に数百と言うカンポン(村)があります。カンポンは、自然発生的な村を行政的にまとめたもので、10戸程度のものから100戸をこえる規模のカンポンもあります。日本で言えば字から大字の単位です。

郡長は、ここでは選挙で選ばれるのではなく、州の主席大臣による任命です。ただし、その郡選出の州議員の了解を得た公務員が郡長になり、各カンポン選出の評議員たちで構成される郡評議会に諮問しながら、郡の行政をとり進めます。

ケニンガウ郡は内陸部最大の郡で、クロッカー山脈公園の脇腹にあたる位置を占めます。14万人という州内第4の人口を有する郡です。かつては、木材をパダス河に浮かべて西海岸に運び出す拠点としてケニンガウの町が賑わい、製材場も多くあったようですが、いまでは多くの土地がアブラヤシのプランテーションに置き換わっています。

郡長のマイケル・エンバウ氏は、郡長の一番手として昨年日本での自然環境保全の集団研修に参加しました。マレーシアの行政官のために特設したコースです。サバからは毎年5名以上の受講が割り当てられます。自然保全の担当官だけでなく一般行政官の中堅官僚が、自然環境保全の重要性を理解し、持続可能な開発行政にあたれるように日本の経験や取り組みから学んでもらうのがこの研修の狙いです。

帰国後マイケル氏は、自然資源の保全が如何に大事かを人前で説くようになりました。彼の話が面白いのは、日本研修前は自然保全など考えたこともない郡長だったが、日本の研修で開発と環境のバランスをとることの重要さを知ったということを強調する点にあります。以前は、クロッカー山脈公園内の木を伐ったり、焼き畑をしたがる住民の側に立って、公園局や森林局に伐採や利用を許可するように文書を出していたが、そう言う人間の欲望を限りなく追求していくような開発を続けると自然資源の管理が正しくできないと日本での研修で認識したと言うのです。

マイケル郡長が日本研修から帰国し二月ぐらい経ち、郡の役所内に環境部門を作りたいと言い出しました。公園管理コンポーネントでは、クロッカー山脈公園の地域住民が自然保全に協力的になることを目指した活動があり、彼の計画はそれに合致するものです。サバ州公園局は、こう言う動きが郡長から出てきたことを大歓迎しました。まったく日本での研修が効果を奏した良い事例です。コタキナバルやサンダカンと言う大都市を抱える郡には環境課がありますが、地方部の郡では例のない快挙ということです。

これからどんな協力ができるかの打ち合わせに、住民参加型保全を担当する坂井さんとボランティア調整員の中村さんと、私の3人でケニンガウ郡庁舎に出かけました。郡庁舎には100人からの職員がいます。郡長はでんとした部屋を構え、たくさんの部下を従えてます。気さくな人柄なので一緒にカラオケや飲みにでかけ、今まで気安くマイケルと呼び捨てにしていたのを改めなければいけないかなと考えたりします。

環境セクションの部屋は、郡長室と同じ階に4人分の執務机が据えられ、住民への環境教育用にと供与したプロジェクターとポータブル・コンピュータが大事そうにおいてありました。副郡長のひとりが室長を兼務し、配置される予定の男女一人ずつの事務員が決められていました。青年協力隊員が欲しいと言うことで、隊員用の机もすでに用意してあります。

まずは住民の環境意識を高める活動をしたいので、環境教育を指導する青年海外協力隊員が欲しいと言うことで、要望書を作成し要請をJICA事務所に提出してもらいましたので、現在の募集にかけられていることと思います。公園内に建設中のビジターセンターの活用や郡内の学校と連携した自然学習などの構想も話し合われました。将来的には、環境影響評価(アセスメント)をできるようなセクションに育てたいとの展望も聞き、大変頼もしく思ったものです。

今年の4月に研修を受けたトワラン郡の副郡長も、環境室を作る構想や郡内の教員を集めて自然保全理解のキャンペーンを企画したりと、日本で受けた刺
激を具体化する動きを見せています。

日本国内で彼等の研修に携わってくださった多くの方々に感謝いたします。

ケニンガウ郡長マイケル・エンバウ氏と環境セクションの職員たち

 

上へ
閉じる

JICA