見て、聞いて、体験した、10日間の教師海外研修@BBECプログラム、サバ
小川久美子(JICAマレーシア事務所 企画調査員)

 JICAでは、毎年、夏休み期間を利用して、日本の先生方を対象とした、「教師海外研修」を実施しております。当国には、今年、東京23区内の先生方8名と、関西地区の7名の先生方、計15名が参加し、「マレーシアと日本のつながり、森と共に生きる住民の生活を知ることを通じて、人間、社会、自然環境とのバランスが保持できる、持続可能な開発のあり方について考える」というテーマのもと、BBECプログラムの視察を中心に、研修を行いました。

サバ大学では、まず、同プログラムの全体概要を把握し、標本室などの視察を通して、サバ州が豊かな自然の宝庫であることを実感しました。特に、サバ大学熱帯生物学保全研究所(通称ITBC))所長のマリアティ氏から、同プログラムが単に自然保護のみを主張するのではなく、自然とともに生きるわれわれ人間をも中心に捉え、人々を巻き込んで実施しているプログラムであることが従来の環境保全型プログラムと大きく異なる点だ、ということが強調されたのが印象的でした。

また、「野生生物生息域管理」コンポーネントでは、セガマ河流域の野生生物保護区内に生活する少数民族ティドン族の人々の村、ダガット村に3泊4日でホームステイを実施し、森と共に暮らす住民の生活を通じて、持続可能な社会のあり方につき、体験を通じて実感していただきました。

ダガット村では、毎日盛りだくさんのアクティビティがありました。ニッパヤシを利用した工芸品教室、腰まで泥につかりながらのシジミ取り、彼らの生活手段である、オニテナガエビ取りへの挑戦、ナイトクルーズによる蛍の鑑賞、また、今回の訪問で一番盛り上がった、「カルチャーボックス」というアクティビティなどです。「カルチャーボックス」というアクティビティは、モノを通じて、お互いの文化を知る、というもので、日本側は歯間ブラシや茶せん等9つの「モノ」、ティドン側は、お祭りのときに女性が身につける髪飾りや、ニッパヤシを均等に細く裂くための道具など、14の「モノ」を準備し、お互いにそれが何に利用されるものなのか、考えながら披露しあいました。お互い、選んだものの形状から、想像し、回答するのですが、まったくの的外れであったりして、双方から大きな笑いが巻き起こりました。何よりこうしたアクティビティは、ティドンの人たちにとっても初めての試みで、自分たちの文化を振り返る大変いい機会となったのです。

こうして3泊4日のホームステイはあっという間に過ぎてゆき、最後の晩には、村長自らティドンの歌や踊りを披露し、太鼓をたたいて、みんなを踊りの渦に誘い込みました。みな、夜の更けるのも忘れて、一緒に笑い、踊り、語り合いました。先生方は3泊4日のホームステイの体験で、子供のように泥にまみれ、ニッパヤシの工芸品作りに悪戦苦闘し、雨水での水浴びを体験し、日本の生活とは違う、けれどどこか懐かしいような優しい現地の生活を満喫しました。こうした地球にも人にも優しい生活を長く続けていくにはどうしたらいいのか、先生方はみな、深く考えさせられたようです。また、小学校しか出ていない村人たちの優雅で倫理感あふれる生活様式に影響された先生たちは、いったい学校教育とは何なのか、という難しい課題にもぶち当たることとなりました。

他にも、自然あふれるダガット村を後にして、広大なプランテーションの中を車で走り、その実態を肌で感じたり、搾油工場の熱気と匂いを体感したり、今回の研修をまさに「五感」を通じて経験していただきました。この「体験」を通じて、先生方は「世界と日本とのつながり」を、まさに肌で感じとり、また、物事は一面だけでは捉えきれないこと、多角的な視点を持つことの大切さを感じ取ってくれました。そして、持続可能な社会の実現のために何をすべきかを自ら考え、それを帰国後、子供たちや地域の人々に伝えて行きたい、と熱く語ってくれました。

今回参加してくれた15名の先生たちが、この研修を通じて、地球に優しい、人に優しい日本人をひとりでも多く育ててくれることを願ってやみません。


ニッパヤシの工芸品作りに挑戦


茶せんを見て、考え込むダガット村の若者たち


日本の着物を着たダガット村の少女たち

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