(株)サラヤさん、ボルネオゾウ救出作戦に立ち上がる
坪内俊憲(野生生物生息域管理)

 2005年、ボルネオ島サバ州南東部キナバタンガン河周辺のボルネオゾウの中に、周辺の住民が野生動物をとるために仕掛けたわなが鼻や足にかかってしまって取れなくなった子ゾウの話がテレビ朝日の「素敵な宇宙船地球号」で紹介されました。キナバタンガン河間近に迫るアブラヤシプランテーション、河岸を定期的に移動してきたボルネオゾウの群れ、そして、人の生活と鼻が今にも千切れてしまいそうな子ゾウの映像は日本の視聴者に大きな影響を与えたようです。

アブラヤシから取れるヤシ油は日本のたくさんの企業が作る洗剤や石鹸、口紅などの化粧品、インスタント麺、ポテトチップスなどありとあらゆる食品に使われていますが、アブラヤシプランテーションの拡大によりボルネオゾウの住処が減っている問題に真正面から向き合ってくれて、テレビの取材に答えてくれる日本の企業は全くありませんでした。ある大企業はヤシ油を使っていませんと言って逃げてしまったそうです。しかし、"自然にやさしいヤシの実洗剤"と銘打って日本で販売されている(株)サラヤの更家社長が現状を知って、名乗りを上げてくれました。更家社長はこれまでZERI:Zero Emission Research InitiativeというNGOを立ち上げ、コロンビアの森林再生など環境保全に積極的に取り組んでおられます。そして、今回の報道をきっかけに、更家社長はアブラヤシプランテーション開発で住処を追いやられ、移動ルートを分断されたボルネオゾウのなかの罠の絡まった子ゾウを救出することに立ち上がってくれました。

大人のボルネオゾウは人の仕掛ける罠などを良く知っているので罠にはかかりませんが、なんにでも興味のある子ゾウたちは罠に興味を示し、遊びで触れてしまい、鼻の先にかかったり、前足にかかったりして取れなくなってしまいます。いくら成長がゆっくりでも、ローブが長い間取れないと、鼻の肉に食い込んできて、最後には千切れてしまいます。ゾウの鼻は人間の手の役割をしているので、鼻の先が千切れてしまいますと、食べ物を口に運ぶことができなくなって餓死してしまうかもしれません。野生生物局のジュム・ラフィアリーダーとして、WWFのボルネオゾウ担当レイモン氏、現地WWFスタッフ、そして(株)サラヤの担当の方人と連絡を取りながらロープの絡まった子ゾウがいる群れを追跡しています。2005年は2頭の足に罠のロープが絡まった子ゾウを捕獲し、救出することができました。一頭はロープが深く食い込んでいたため、セピロックオランウータンリハビリテーションセンターに搬送して、1ヶ月治療してまた同じ群れの近くで離しました。10月には捕獲しやすい場所に群れが近づいてきたという報告で準備を進めたのですが、群れがまた森の中に戻ってしまい、今は待機中です。鼻が千切れてしまう前に何とか捕獲しやすいところに移動してきてもらい、早く救出できるよう、リーダー、WWF、レンジャーと協力してくれている(株)サラヤの皆様とやきもきしているところです。今月から移動が始まりそうなので、次には良い報告ができるようボルネオゾウの移動を見守っています。この活動をきっかけにヤシ油を使っている日本の企業の皆様から活動へ支援してもらえるようお願いして行きたいと思います。

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