現場の声を聞け! 第2回環境ジャーナリズムワークショップ開催
2005/8/8
田儀 耕司(環境教育)

 ワークショップの企画は、今年11月に日本で行う環境ジャーナリスト研修が発端でした。サバ州政府から「環境ジャーナリズム先進国である日本の専門家に、サバ州の環境ジャーナリズムの現状を分析・評価して欲しい」との要請があり、日本の研修受入窓口になってくれる「日本環境ジャーナリストの会」の瀧川さんからも快諾が得られ、短期専門家として、サバに7月24日から1週間、お越しいただけることになりました。これを受けて、ジャーナリスト・タスクフォースから、「せっかくの機会なので、サバの自然環境問題が起きている現場でワークショップを開催しよう」という提案がありました。真面目で確実に仕事をこなす同タスクフォースリーダーのジャスウィンダさん(全国紙「ニュー・ストレーツ・タイムズ」記者)は、「ほとんどのジャーナリストが行ったことがない東海岸のサンダカンでワークショップを開きたい」という意見を私に出してきました。場所がどこであろうと異論はなかったのですが、ワークショップのテーマが見えなかったので、「せっかくやるのなら、人と自然の共生、摩擦をテーマにしてはどうか」という提案を出し、後はタスクフォースに一任することにしました。

最初は頭を抱えていたジャスウィンダさんでしたが、新たに加わったタスクフォースメンバーたちの力を借りて、1日目:人と自然の共生におけるジャーナリズムのあり方をテーマに、2名の講師からの発表、自然環境をテーマにした記事の書き方に関する演習、2日目:キナバタンガン川で活動するコミュニティ支援型のNGO「Hutan」の活動視察、3日目:セピロックにあるオランウータンリハビリテーションセンター視察という、かなりよく練られたワークショップを最終的に企画しました。

7月26日、当日集まったのは、新聞記者11名、ラジオレポーター1名、新聞社カメラマン2名、テレビカメラマン1名、それに短期専門家の瀧川さん、マレー半島から駆けつけた講師2名等、総勢20名。セピロックにある森林局の施設、熱帯雨林探査センターでセンターの概要を聞いた後、昨年のワークショップも講師として参加してくれたフィリップ・マシュー氏が自然環境問題を報道する時の重要事項について発表、続いて瀧川さんが日本の環境問題の歴史を紹介、夕食を挟んで、サバ州内で最近報道されたある新聞記事(キナバタンガン川の野生生物保護区の問題)を題材に、3つのグループに分かれて演習を行いました。各グループにはテーマが与えられ、それぞれ、ボランティアレンジャーの提案、稀少野生生物の保護問題、エコツアーに焦点をあて、記事を書き直すことに。
「どのテーマが一番読者の関心を惹くのか?」というフィリップ氏の質問に、迷わず皆「エコツアー」と返答、夜10時前まで熱い議論が繰り広げられました。

7月27日には午前6時半出発。誰も遅れることなく、無事に出発します。当日は「Hutan」の代表のイザベラ博士が同乗し、道中スカウの現状やHutanの活動について、詳しい説明をしながらバスはスカウへ。スカウ村に入る途中、先週まで森があったという伐採地と、小規模なアブラヤシ農園でHutanが支援しているゾウ対策を視察した後。スカウ村には10時過ぎに到着。
Hutanはオランウータンやゾウとの摩擦に悩む村人たちと協力し、野生動物を駆除せずに共存できる道を模索し、また、Red Ape Encounters & Adventuresという村人の手によるエコツアー会社に助言を与える活動を行っています。参加者たちは、案内をしてくれた村人やHutanのプロジェクトに関わっている人たちに熱心にインタビューしたり、森の中で野生のオランウータンに出会って感激したり。
夕食後は昨年も来てくれたTV3の名物レポーターであるカラム・シン・ワリア氏が、2002年に報道したスカウ川汚染の映像を紹介。最初に汚染の現場を報道した後、同地区選出の議員を呼び出し、現場を見せたり、環境アセスメント担当の環境保全局の意見を求めたりして徐々に決定権者を追い詰めていく様が映し出されており、見事な報道ぶりです。結果、川を汚染したアブラヤシの搾油所は移転され、罰金約2億4千万円を支払うという結末に至ったそうです。

映像を見せた後、カラム氏は出席者たちに、「今日のスカウ訪問で君たちは何を報道したいのか、言ってごらん」と質問。最初は黙っていた記者たちも、少しずつ、「ボランティア野生生物保護官に焦点を当て、彼の生き様を報道してみたい」、「Red Ape Encounters & AdventuresやHutanの行う、地元に根ざしたエコツアーについて、書いてみたい」、「ゾウの被害の実態について、更に取材してみたい」と様々な意見が出てきました。

3日目にセピロックでオランウータンの置かれている現状について聞いた後、まとめのセッション。講師たちから、「現場の声を聞きなさい」、「何回も現地に足を運んで、必要な情報を積み重ねていきなさい」と参加者への励ましの声があり、無事にワークショップは終了。
参加者たちから、「書きたいことが沢山あって、まだ頭の中がまとまらない」という声を聞きつつ、コタキナバルに帰って来ました。

今までであれば、スタディ・ツアーの記事は遅くても2週間以内にある程度出されていましたが、今回はそれと比べるとややスローペースです。聞くところによると、皆日曜日の特集記事に向けて、着々と準備を進めているとのこと。すぐには記事が出ないのは、むしろ記者たちの知見が深まった証と言えるかもしれません。講師たちの意見に従って、参加した記者たちから内容の深い記事が書かれることを楽しみにしています。

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