BBECプログラムの現況について
2005/6/28
松永 龍児(チーフアドバイザー)

  BBECプログラムが現在どのような状況か簡単に説明したいと思います。
 サバ大学熱帯生物学・保全研究所、サバ州公園局、野生生物局、主席大臣府科学技術室の4つの主務機関を中心に、多くのサバ州政府関係機関やNGOの協力を得ながら、3年半の協力期間が経ちました。今までに多くの新聞や雑誌に取り上げられ、サバ州の自然環境に対する意識は高まってきています。
 自然を守るためにはそこに住んでいる人が自らの力でその必要性を理解し、本当に守ろうという気にならないと守ることはできません。如何に学術的に貴重で生物の多様性や熱帯雨林の重要性を世界中の知識人が説いても、そこには人が住んでおり、その人たちが利用しており、その人たちのものなのです。世界自然遺産登録第1号のあのガラパゴス諸島でさえ、3万人近くの人が住んでおり(全て移り住んできた人たち)、その両立に頭を悩ませているのが現実です。
サバ州においても、30年前から多くの原生林が切り開かれ、経済活動に利用され、今もそれは続いています。その多くは日本で消費されました。サバ州政府の計画では、原生林に近い形で保全されるのは約5%で、その他は生産林やアブラヤシのプランテーションに代わっていくことになっています。このヤシ油のほとんどが日本で消費されています。
 この現実をふまえ、少しでもこの国の人が、自らの手で、少しでも多くの自然を保護することがサバ州の将来をどれだけ明るいものにするか考えてもらえる力をつけるのが私たちの狙いです。

1. 研究・教育コンポーネント
 サバ大学の熱帯生物学・保全研究所では、自然保護のベースとなる標本管理や研究が欧米中心に行われてきた現状を少しでも改善するように、兵庫県立人と自然の博物館を中心に協力いただき、標本データの管理のための施設やシステム、さらに多くの教材がサバの人の手で作られるようになってきています。
 今後はそれを充実させるとともに利用して、いかにサバの自然を保護するか開発するか大学や研究所がオピニオンリーダーとなっていくことが期待されています。

2. 公園管理コンポーネント
 公園管理でもクロッカー山脈公園を中心に徐々に成果が上がってきています。 クロッカー山脈公園は、今から20年ほど前に、コタキナバルの水源林の意味もあり公園として指定されました。しかし、キナバル山や他の公園のように特異な景観があるわけでもなく、土地も広大なのでなかなか手を付けられずにいました。
そこで日本の協力で管理事務所やビジターセンター等の施設を設置するとともに公園の管理計画を検討することになりました。この公園は、公園内に人も動物も植物もすんでいるというもので、関係機関や地域住民の理解が得られないと管理が難しいわけです。そこでこの公園をモデルに管理計画を策定し、多くの自然を今後残すため地域社会が中心となって公園管理を行う方法を模索しています。
 非常に困難なチャレンジですが、この計画がうまく行けば、地域の人が自然を管理していくすばらしいモデルとなると思います。

3. 生息域管理コンポーネント
 また、野生生物局が率いる生息域管理コンポーネントでも大きな成果が上がっています。
新たにセガマ河下流域が、新しい保護区として閣議で承認されました。また現在、この地域を含んだ住民主導の総合管理計画が検討されています。
一方、象やオランウータン、テングザルなど大型野生動物のモニタリングも開始しており、航空写真を利用した生息域分布図作成も着手されました。
 さらに特筆することとして、試験的に行っていた村落組織が中心のエコツアーが実現に向けて一歩ずつ前に進んでいます。

4. 環境啓発コンポーネント
 さらに、環境啓発コンポーネントも驚くべき成果が上がってきています。環境教育教材をサバの教育局関係者が自らの手で作りまた改訂も自分達で行うというようになってきています。また、ジャーナリストの中にも環境に対する意識が芽生え、自分達の手で考え、企画運営するようになってきています。


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 多くの専門家の献身的な努力のおかげで、自然を守り、生物多様性を保全するという困難なこの挑戦にサバの人々が自分で考えるようになり、持続可能な豊かな社会を目指し始めていることは非常に喜ばしく思っています。

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