オバちゃんパワー炸裂!
スグッ川のアブラヤシプランテーション・スタディ・ツアー
2005/4/13
田儀 耕司(環境教育)

 

 

 

 

 

 

 

3月29日〜30日、環境啓発コンポーネントの開発業者タスクフォースが主催し、ジャーナリストタスクフォースと非環境NGOタスクフォースが相乗りして、東海岸にあるスグッ川のIJMプランテーションでスタディ・ツアーを行いました。

 

スグッ川には三日月湖がいくつかあり、IJMプランテーション内にある三日月湖では、現在サバ大学のバイオテクノロジー研究所が水生生物の調査を行っています。今回のスタディ・ツアーの最大の目的は、とかく評判の悪いアブラヤシ業界にどうやって自然環境への配慮を促していくのかを考察することでした。

 

 アブラヤシはマレーシアの一大産業です。全世界のヤシ油生産量の約半分はマレーシアで作られており、そのうちの30%がサバ州から、さらにその約半数がサンダカン地方で生産されています。つまり、世界の7.5%のヤシ油がサンダカン地方で生産されているという計算になります。ここから、マレーシア最貧州のサバ州にとって、如何に重要な産業か窺い知ることができます。アブラヤシ産業が大きくなったのはこの20年ほど。訪問したIJMプランテーションも今年20周年を迎えるとのことです。

 

 ツアーの参加者の大半は女性。当然のことながら、道中は賑やかなものになりました。お菓子をほおばり、あちこちで写真撮影。雰囲気は慰安旅行と化していきます。

 

 サンダカンからベルランまで車、そこからボートでスグッ川沿いにあるIJMのプランテーションを目指します。プランテーションの港で小さなボートに乗り換え、今度は三日月湖へ。IJMプランテーションの敷地内にある三日月湖まで、川沿いには大きなフタバガキの木が時々見られます。プランテーションの人たちの話だと、テングザルやヒゲイノシシが時々見られ、上空をサイチョウが飛び交うそうです。

 三日月湖は人の手は加わっているものの、比較的状態の良い二次林の中にありました。ここを研究対象にしているサバ大学のアン教授によると、湖周辺が伐採されたり、アブラヤシプランテーションに変わってしまった三日月湖と比べると水質が良く、透明度も高いそうです。アン教授はまた、この三日月湖がエコツアーに向いていると述べ、IJMと共同で湖の管理計画を作る予定があると説明しました。アン教授によると、よく似た環境のあるスカウでは、ツアー会社を積極的に受け入れてきた結果、三日月湖の汚染が進んだという皮肉な状況が生まれているそうです。まだほとんど人に知られていないスグッ川の三日月湖は、幸いにして私有地内にあるため、先に管理計画を作ることができるのだとアン教授は述べました。

 

 IJMではこの他、新しくプランテーションを切り開いた土地に、日本のクズに似たつる性の植物を植え、土壌流出を防いだり、アブラヤシの皮を焼却せずに、有機肥料に転用したり、害虫の駆除に殺虫剤ではなく、天敵を放すことでコントロールしたり、様々な環境配慮を行っています。しかし、これらはいずれも外来種によるもので、ボルネオ固有の生物を使っていないことが引っかかりました。

 

 参加者のオバちゃんパワーは至るところで炸裂。特に、中国語紙の記者のリオンさんは「肥料はどのくらい巻いてんの?」、「労働者にどのくらい給料を払っているの?」とプランテーションの人たちを質問攻めにしていました。

 

 IJMのCEOのタン氏は、「三日月湖を残したり、環境に配慮をするのは、自分たちの子孫のためであり、我々の企業の責務である」と述べていました。

 

 IJMによると、大手のアブラヤシ業者の多くは環境になんらかの配慮を行っているものの、中小のプランテーションにはこうした配慮をしていない業者が多く、このような業 者の背後には上級官僚、州議会議員、郡役場の役人がいるそうです。また、中小のプランテーションに環境配慮が波及しない理由として、環境配慮が収益に影響しないことを挙げていました。環境配慮を行って作ったアブラヤシの実から採れる油も、環境に配慮せずに作ったアブラヤシの実から採れる油も売値に違いはないそうです。これでは確かに、企業が積極的に環境に配慮を払う動機付けにはなりません。IJMのジョセフさんによると、今後、IJMの製品が農薬や化学肥料をほとんど使わない健康商品であることを前面に出していくつもりだそうです。

 

 スタディツアーの後、4月9日に反省会が開かれました。ニュー・ストレイツ・タイムズ紙の記者で、昨年日本にも研修に行ったジャスウィンダさんは、「今後、アブラヤシ産業と一括りにせずに、環境への配慮の必要性を訴えることで、環境への配慮を怠っている企業に注目が集まるようにするのが、ジャーナリストの仕事だ」と発言しました。同タスクフォースのリーダーのスーザン・プディンさん(環境保全局)は、開発業者タスクフォースのメンバーでもある、マレーシアアブラヤシ連盟と連携し、どうすればアブラヤシプランテーション業者が環境配慮を行うのかを検討したいと述べました。

 

 IJMプランテーションの人たちが言うように、今後5年から10年の間、ヤシ油産業はサバで繁栄を続けていくに違いありません。以前農業局の人から聞いたところでは、ヤシ油産業が下火になった時の土地転用についてはまだこれといった策は考えられていないようです。ヤシ油産業が今後も拡大を続けていくのであれば、NGOやジャーナリストの力によって、環境に無配慮な企業に圧力をかけるだけでなく、IJMプランテーションのように、環境への配慮を行っている企業に対し、サバ大学等の研究機関が生態系への影響が少ない害虫や雑草の管理方法を指導していけるだけの研究を蓄積していくことが必要となるでしょう。

 

 巨大なヤシ油産業を変えていくことはかなり困難なことに違いありません。しかし、消費者である私たちひとり一人がヤシ油関連製品について、もっと注意を払っていけば、いつか業界が変わることもあるかもしれません。


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