環境保全と開発援助、人間の安全保障:援助の隠し味No.2
2005.01.19
草野孝久
 日本の技術協力は「人づくり国づくり」をスローガンに50年やってきました。最近は「人間の安全保障」など新しい概念やスローガンを前面に立てています。

 技術協力というものは人を育て組織を育て、技術や理論・概念と言ったものを具体化し、国家や人間社会が安全な将来を確保できるようになることへのお手伝いだと思います。地球環境問題に対処するための技術協力もその線状で位置づけJICAが行っている訳です。この意味からも、国民の支持を確保し、国際的なメッセージも発信していくべきだと思います。

 最近の国際的な開発援助の動向は、それが政府機関よりも更に個々人のレベルでの開発、つまり地域社会の発展や生活の向上、貧困問題解決や福祉、人権などの向上に向いているということだと思います。そうした各課題で安定した社会となることが人間の安全保障であり、開発だと考えられるようになってきたのだと思います。

 地球環境問題や自然資源の保全というのは正しく人間社会全体にとっての安全保障の中心におかれて良い課題です。しかし、この課題が個々人や地域社会にどう関わっているのかという視点がないと、被援助国側からも援助を支持する日本国民からも受け入れられないし、現場でも成果を上げられないプロジェクトになってしまいます。

 環境保全に関する国際会合でも開発系の人が大勢参加して、環境的な持続可能な社会開発を議論しています。生物学や動物保護の話ばかりで、人間の生活、国家経済社会と結びつけられない議論は大勢には受け入れられません。「生物多様性の重要性を理解せよ、大変なことなんだ」と叫んでも、支持を得られなければ致し方ありません。この点では自然保護派のひとたちや生物学派の人たちは周りを良く見回し、開発援助に関わる人たちや一般市民への説明責任、説明の方策を工夫して理解を求めていかなければなりません。

 技術協力を技術移転という概念で説明しようとする人が未だにおりますが、工場や企業の進出には合っていても、現在の技術協力を語るにはあまり適正な言葉ではないと思っています。日本が非常に優れている技術を教えれば良いだけの協力などはすでに存在せず、日本の国際協力は、技術そのものよりも人材育成や技術そのものを活かす組織体制づくりに技術協力の重点を移して久しいのです。特に、環境問題では日本の技術や考えを移転するのではなく、一緒にその国に合った方式を考えて実現するための共同作業という姿勢が重要だと思っています。

 動物の保護を前面に出しても、森林や湿地帯と言う生息域の保護の重要性を看板にしても、開発援助の世界では理解されるのが難しいですね。

 自然環境、生物多様性、生態系、生物資源が途上国の人びとの日々の生活、国家経済社会の行く末、つまり人間の安全保障にどう関わっているかをしっかり説明することが重要です。それを、各プロジェクトに関わる専門家も、JICAの職員ももっと積極的に発信していく必要があると思います。このことは、私がメルマガやホームページでやってきたことの背景ですし、また、BBECプログラムでカウンターパートたちに日々言っていることですし、またあちこちで講演したり文章を書いたりしてその宣伝役を買って出ている理由です。

 私たち、自然保護や環境問題に関わる人間に求められる役割は日に日に大きくなっており、その分責任も大きいことを認識し、心を引き締めたいと思います。

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