利用者中心の環境教育:短期専門家小林毅さんの訪問

環境啓発コンポーネント 田儀 耕司
10月21日から11月5日までの約2週間、環境啓発コンポーネントでは、環境教育教材の開発を目的として、自然教育研究センターの小林毅さんをお招きしました。

環境啓発コンポーネントでは、これまで内外の関係者から環境教育教材の開発の必要性を煩いほど言われてきました。今年3月にも短期専門家を招聘し、サバの環境教育の現状分析を行ってもらいましたが、なにぶん期間が短かったことと、受け入れるマレーシア側の準備が不十分であったことから、最終目的の教材開発までは辿り着きませんでした。

サバには環境教育の教材が幾つかあります。しかし、利用者の視点で作られていないため、学校の図書館に飾ってあるだけだったり、製作したある部署の倉庫に山積みになっていたりして、そのほとんどが利用されていません。サバ州教育局は環境教育の普及に熱心ではあるのですが、連邦政府から配布された資料がある中で、新しい教材の開発に対してどれだけ積極的になってくれるのか、いささか不安ではありました。

10月27日、小林さんと共に教育局に挨拶に行くと、こわ持てのAminahセクター長が出迎えてくれました。小林さんから、小林さんが作った環境教育教材の説明を行ってもらった後、様々な環境教育教材があるものの十分に利用されていない現状、利用者中心の教材の必要性について説明したところ、ずいぶんあっさりと、「それじゃ、学校の先生に作らせましょう」という理想的な回答が得られました。環境啓発コンポーネントの関係者からは、「動きが遅い」と陰口の叩かれることが多い教育局ですが、11月4日には早速作業部会のメンバーの先生達を集め、小林さんを講師に、第1回の説明会を行いました。その席上、Aminahセクター長は、「皆さんの名前が入った本が出来るんです。来年の5月までには完成させましょう!」と先生たちを鼓舞していました。あまり高度な内容にならなくとも、先生たちが実際に使える教材を作ってくれれば、と期待して見守っていきたいと思います。

小林さんの派遣期間中のもう一つの成果は、レンジャー及びインタープリターの研修が具体化したことです。環境教育を推進する上で、自然環境を分りやすく説明できる人を増やす必要があります。サバでは、レンジャーの多くは公園や保護区の管理を主務としているため、来訪者への応対は二の次になってしまいがちです。

11月3日、午前中のみの半日インタープリター講習会をコタキナバル市野鳥サンクチュアリで開催しました。当日は森林局、公園局、野生生物局を中心として、45人が集まりました。小林さんは、インタープリテーションには3種類あることを、ゲームを通じて参加者に説明しました。参加者たちは、通常のインタープリターがよく行う説明型のインタープリテーションでは、所要時間が短くて済むという長所はあるものの、聞いている人の多くは十分に理解しないままであるということを実体験したようでした。参加者中心のインタープリテーションの実習では、葉っぱを使ったじゃんけんを行うことによって、落ち葉の一枚、一枚を参加者が、見て、触れて、嗅いでみることを通じ、自然に学んでいくということが示されました。

環境教育というと、その実施への義務感からか、こちらの人たちは堅苦しいものを頭に思い浮かべがちなようですが、参加する人たちが楽しめる環境教育プログラムや教材作りが重要であることを、小林さんから教わったようです。小林さんから色々指導を受けていた、Rainforest Interpretation CentreのインタープリターのBernadetteさんは、来年度、レンジャーの研修コースを公園局や野生生物局とも連携して、企画・実施してくれることになりそうです。

教育局に主体性が出て来たことといい、Rainforest Interpretation Centreでレンジャー・インタープリターの研修を他のコンポーネントと共同で行えるようになったことといい、少しずつではありますが、利用者のニーズに合わせた環境教育活動の企画、実施という当たり前のことがようやく行えるようになりつつあります。

 

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