なぜ国際会議を?(援助の隠し技:その1)

2004/11/24
草野 孝久
 なぜ国際会議を毎年行うのか,技術協力としてはどのような意味があるのかについて、少し説明してみたいと思います。

 BBECプログラムへの協力が開始される事前の調査時に,サバ大学側から毎年国際会議を行いたいので支援して欲しいと言う希望が出されました。その目的は,第1儀的にはサバ州の生物多様性研究や保全の現状を国外に知らせ,国際的に認知してもらいたいというものでした。そのことにより、より多くの研究者や保全支援のプロジェクトがサバ州にやって来ることを期待した訳です。

 このことは、日本が技術協力をする相手が国際的な認知を受ける同時に,協力で達成した成果を持続するために重要なことだと考えました。しかしながら、サバ大学のみの主催では,学術的なものとなり,ほかに数多ある国際会議、セミナーなどとあまり変わりなく,BBECプログラムが目指す保全関連州政府機関間の連携、大学と州政府の連携による生物多様性の保全活動の統合に寄与しません。このため、国際会議は大学と州政府の共催で行うこと,4つのコンポーネントの長が国際会議の準備委員を兼ねることを条件に、支援を開始しました。

当初の国際会議の目的は,(1)全参加機関の連携そして統合化、(2)BBECプログラムの成果の広報の2つでした。

 協力1年目の終了時、2003年2月に実施した第1回国際会議は「生物多様性保全のための効果的アプローチ」というテーマでした。主に,生物多様性についての調査研究、保全手法論を交換し合うという会議になりました。様々な保全に必要な活動に包括的に取り組んで,調査研究と保全事業をより効果的かつ効率的なものに統合しようと言うBBECプログラムの目的に,手法論から取り組んだ会議だったと言えます。

 第2回目の国際会議は2004年の2月で,BBECプログラム2年間の成果を踏まえてテーマは「生物多様性保全:一緒に前進しよう」でした。生物多様性の理解が如何に人間の行動を変えることができるか,人々を生物多様性保全に統合する方策の2つの分科会で様々な事例や考え方が発表され議論されました。

 これまでの国際会議の顛末などについてはhttp://bbec.sabah.gov.my/japanese

でお読みいただけます。また、過去2回の国際会議のプロシーディング(発表記録)は、bbec@sabah.gov.my に連絡しデジタルファイルを入手することができます。

 来年(2005年)2月の第3回BBEC国際会議は,この流れを受けて「社会の在り方としての生物多様性保全」をテーマに実施することになりました。

 振り返ってみると,国際会議のテーマや内容にはBBECプログラムの軌跡と成長が見て取れます。自分たちの体験と国際的な動向を組み合わせながら、今何をすべきかが見えてくる過程が分かります。つまり、第1回ではこれまで自分たちが取ってきたあるいは知っている保全の手法論を並べて、それらを包括的に取り込んでやって行こうと言うBBECプログラムの趣旨が浸透して行ったことが分かります。第2回目は,様々な政府機関やNGOが一緒にやって行かなければ行けないということを理解した上で,一般人にもっと生物多様性の重要性を理解させるのにはどうしたら良いのか,保全に参加させるにはどうしたら良いのかという方に、BBECメンバーたちの目が向いたことを示しています。

 第3回目では,私から最初の準備会議の時に「如何に生物多様性保全を社会経済の中心に持って行くことができるか」を考えてみて欲しいとだけアドバイスしてみると、彼らの中から、産業界特に,自然破壊と直接関係する森林伐採業界、アブラヤシ・プランテーション業界、建設業界などを巻き込んだ活動が大事だという意見、辺境の村落社会の参加の一層の促進を分科会の課題にしようと言う風に議論が進展しました。これらは,実は4つのコンポーネントがそれぞれ展開しつつアプローチであり、抱えている課題でもあるのです。そこで特に,今回は、4つのコンポーネント長のみによる準備委員会でなく、広く政府機関、NGOの参加による準備委員会にしてはどうかと助言し、郡の役場の長や助役が参加しての準備作業が進んでいます。そのなかで、「社会の在り方としての生物多様性保全」というテーマが決まり,4つの分科会が形成されたのです。そしてまた、政治家による討論会と言うとてつもない構想が生まれたのです。

 権威主義最優先の国で、こうした参加型による決定で大臣たちを引っ張りだせるものか,大きな挑戦です。また、公開政治討論会のようなものはこれまで実施されていない社会風土の中で,果たして何人の政治家が参加してくれるのか,議論を通り一遍にしないために財界人や学者を入れる必要があるなど議論はつきません。いずれにしても、メディアを通じて一般国民が生物多様性保全について関心を持ってもらう仕掛けとしては再考のお膳立てになることは間違いありません。

 これまでのところ、国際会議による援助効果は,以下の5つあると考えています。

(1)当初はあまり仲の良くなかった連邦機関であるサバ大学と州政府の公園局や野生生物局などの機関が一緒に作業を行うことで、連携調整そして統合化が促進されてきた。国際的に注目されるので、成功に向けて協力し合う。

(2)周辺各国や国際機関からの参加者を得てのセミナーであるので,自分たちの実力が分かり,また国際的な動向を知る機会になる。そのことで調査研究、保全事業のアプローチについての知識が増えている。

(3)国際会議ということで,主席大臣など州の要人に出席してもらえるので広報効果が大きい。生物多様性保全の重要性を一般市民に知らせることができる。

(4)カウンターパートたちが自分たちの国際会議を開催するということで誇りを持ち,更にBBECのメンバーとしての活動に熱心になる。

(5)日頃は各コンポーネントの各活動をこなしているカウンターパートたちや外部の参加者たちが,BBECプログラムの全体的な取り組みそしてその進展、向かっている流れを実感することができる。

国際的な会議の運営の仕方、資金繰りなどについての経験を積み,将来日本の援助なしに国際会議を実施できるようになる。

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