国立公園管理手法開発プロジェクトの進捗
2004.9.30
草野 孝久
  サバ州内に現存する6つの公園はIUCNの定義上は国立公園であり観光案内等にも国立公園と記されているが、サバ州の公園条例により制定されサバ州公園局が管理している。これらの公園はいずれも保護区として設置され、公園内での居住や産業活動を排除した管理方式をとってきた。しかし、公園設置時の調査不足や管理態勢の不備が原因で、公園内部に村落が存在することや焼き畑などで開墾されている地域があることが判明し、これまでの方式では管理しきれなくなった。このため、14万haの面積を持つクロッカー山脈公園をモデル地区とし、国立公園内に居住区や農林業・観光業などを包含する日本型の管理方式を参考に、実効性のある公園管理手法を開発することを目的に、このプロジェクが実施されている。

 この公園管理コンポーネントは、サバ州公園局を主務機関とし、野生生物局、森林局、土地管理局、環境保護局およびサバ大学に加えて、クロッカー山脈公園に隣接する8つの郡役場が共同で活動を開始した。その後、サバ州灌漑排水局と観光局が作業部会のメンバーに加わり以下の5つの成果を目指した活動を行っている。


1. 地域社会と公園管理に関る状況把握


 クロッカー山脈公園境界線上の内外に点在する村落の物理的状況、社会経済、住民意識、自然環境などを調査し、公園周辺17行政村の社会経済データが収集され、村落プロファイルの作成が完了した。また、関係する役所と地域社会住民、NGOとが土地問題や代替収入源あるいは生活水準向上を目指した可能性などについての対話やワークショップを開催してきた。調査や対話の結果はマレー語や英語の報告書に取りまとめ、出版物として公開してきた。
2. 地域社会と公園の関係を考慮した公園管理計画の策定
 公園周辺の2地域を対象に行った住民参加型エコ・ツーリズム開発の調査結果を踏まえ、官民関係者参加による「観光に関するワークショップ」を開催し、クロッカー山脈公園に於ける観光開発の方針を取りまとめた。
 こうした各種調査、ワークショップ、地域住民との意見交換などの結果を元にクロッカー山脈公園管理計画案のドラフトを作成し、ワークショップの開催などを通して一般公開した。関係者や一般市民からの意見を踏まえて最終的な公園管理計画とすべく修正作業中である。同時並行的に、各地区毎のアクションプランも作成中である。管理計画は最終的には、州閣僚会議での承認えて公式化される。


3. 公園管理関係機関の管理能力の強化


 レンジャー訓練コースを毎年実施し、自然環境モニタリング技法、関連法令と遵法取り締まり活動、住民参加型の自然保全など必要な知識と技術を身につけさせている。ビジターセンターの展示や公園内での自然理解教育活動を改善するための技術指導を行ってきた。公園局の幹部に対しては、公園管理計画策定への技術指導により、地域住民活動との共存型公園ビジョンへの理解を高めてきた。これまでサバ州公園局長、副局長と局長補佐、クロッカー山脈公園長、郡長などが日本における国立公園管理について学んでいる。
 エコ・ツーリズム開発のために、村落における人材育成研修や郡役場でのワークショップを実施してきた。地域住民代表たちは観光事業について多くを学び、代替収入源の創出に対する意欲を高めている。

4. 公園管理の向上


 公園管理と観光や教育の拠点となるイノボン、マフア、ウル・キマニス、メララップにサブステーションを建設した。また、山脈公園本部事務所敷地内にネイチャーセンターを建設した。これらの施設建設は、日本側からは資材の供与のみで、設計・施行、内部備品、道路建設にかかる経費は公園局が負担している。ネイチャーセンター、ビジターセンターを兼ねるマフアとイノボンのステーションでは、観光客向けの展示や周辺施設の整備が進められている。環境教育パイロット活動として、周辺地域住民のワークショップや地元学校による自然学習キャンプ、指導者(ファシリテーター)の訓練、日マ交換学習などが実施されてきた。

 

 ケニンガウ郡に環境保全ユニットが設立され、環境モニタリングや啓発活動を行うことになった。タンブナン郡とペナンパン郡では観光開発を目的とした「郡観光開発委員会」が設立され、会議やワークショップを重ね、行動計画案が策定された。今後、村落でのニーズを踏まえた組織体制作り、人材育成、施設整備などを行って行く。地域の行政組織を巻込んでの公園管理のモデルが確立されつつある。
 タンブナン郡にあるマフアの滝付近は、郡役場が観光地として開発しようと整備したが、その後運営管理がうまく行かず荒れていた。BBECプログラムの活動により役場や村議会と公園局の話し合いが進められ、郡はこの地域を公園局の管理に委ねることになった。ビジターセンターが建てられ、滝までの1kmほどのトレッキング道と滝の周辺の施設も公園局によって再整備された。これにより実質国立公園に隣接した十数ヘクタールが実質的に保護区になった。その後、知名度も上がり、滝までのフタバガキ科の大木が繁る原生林、華麗な蝶たちや珍しい昆虫、そして清涼な大滝を楽しみ、大自然のすばらしさを味わう観光客の数は着実に増えている。

5. 公園管理実施に関する経験や教訓を分析しまとめる


 この成果は公園管理コンポーネントの総まとめとして期待されるものであり、主な活動は平成17年度に本格的に実施される計画である。現在までのところ、公園管理計画の作成に行った調査やワークショップなどの記録が幾つかとりまとめられ、出版物として公開されている。

 

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