「生物多様性を保全する」という考え方
2004/9/17
草野 孝久

 

 生物の多様性は、自然の豊かさを示すものであり、これを保全することがすなわち自然資源や環境の保全であるという考え方は、1980年代に発達しました。このまま人間活動が拡大し、環境に十分に配慮しない開発が続けば、野生生物が棲息する地域は減少し、残された自然も生物の多様性が低くなります。そして、自然生態系の再生力が弱まり、人間の環境を支える自然資源あるいは自然生態系によって人間にもたらされるサービス、例えば水源の涵養力や二酸化炭素の酸素還元力などが劣化していくということです。

 地球環境を守るためには、生物の多様性を保全することが有効な方策だという考えが広まり、1992年にリオデジャネイロでおこなわれた地球サミットで157国が「生物多様性条約」に署名しました。

 では、「生物の多様さ」とは具体的に何を指すのでしょうか、それを守ることがなぜ人類にとってそんなに大事なことなのでしょうか。

 「生物多様性」という言葉からは、まず生物の種類の多さをイメージできると思います。いろんな野生動物や植物を思い浮かべ、それが多くいるほど豊かで良いことなのだなと理解できます。この概念が提唱された当初は、生物の遺伝子、種、生態系の3つのレベルで多様性を確保する必要を論じてきました。最近では、これに生物群が創造する「景観の多様性」を加える人たちもいます。このような「生物多様性」の価値は、一般の人には分かりにくく、「なぜ生物多様性を保全しなければならないのか」という問いに対して、十分な説得力がありません。そこでしばしば、人類にとって、利用する価値のある多様な生物がこれから見つかるかもしれないので、多様な生物を保全する必要があるという説明が使われます。

 「生物多様性条約」の締結以後、自国の生物資源に関する権益を守るために、多くの途上国では、野生生物の保全条例をつくり、国外持ち出しを制限するようになりました。

*この文章は、「環境と開発,」斎藤千宏編著, 日本福祉大学刊(2004):第14講 ボルネオ島の自然保護, pp69 (CD-ROM教材)の一部を書き直したものです。

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