消費文化を考え直そう(セガマ河下流域エコツーリーズム 第2回一般人試行に参加された皆様へ)
2004/08/27
野生生物生息域管理アドバイザー 坪内 俊憲

 初日、ホテルのオーバーブッキングに始まり、二日目に乾期にしてはとても珍しい午前中の雨。この先何が起こるのかと不安にさせる始まりで、正直とんでもないことが起こるなと予感させる出だしでした。が、後は雨にもほとんど降られず、大きな問題もなく過ごせました(私だけが問題がなかったと思っているのかもしれませんが)。サバでは年間晴れという日は50日もありません。一日中キナバル山がきれいに見ることができた昨日はその50日中の一日だったようです。7分の1の確率を物にした皆様の強運には驚かされるばかりです。

 残念ながらオランウータンにはあえませんでしたが、河を渡るゾウに会い、7分の1確率の天候に恵まれキナバル山を一日眺めることが出来るなど、1年半住んでいる私がほとんど経験したことの無いことが起こりました。これは皆様の元気と真心に感謝するためにボルネオの多様な神様がくれたものを思います。

 日本では相変わらずディスカウントストアーが業績を伸ばし、輸入される合板で作った安い家が次々と立てられ、ヤシ油の入った化粧品やマーガリンが売れています。先進国の消費者の購買意欲が原因となって森と一緒に生活をしている人たちの豊かな生活を奪い、オランウータンやテングザルの住処が消えていっています。アメリカ合衆国では強欲に利益を搾取する資本家のために自国の人口の15%の人が貧困にあえいでまともな医療も受けられずに生活しています。マレーシアではアブラヤシプランテーションで財産を築いた華僑は欧米銀行や資本家の協力を得て闇で欧米にお金を運び、ひとたびマレーシアに事あればいつでも先進国で優雅な生活が出来るように準備をしています。欧米資本家はマレーシアの華僑からもたらされる資金で株式という公設賭場でギャンブルにふけり、ギャンブルのルールを良く知らない途上国の人からお金を巻き上げています。中国から輸入される安いコートのフードのふちについている毛皮はコヨーテとかかれていますが、実際はモンゴルやシベリアで密猟、中国に密輸された6000から8000頭ほどのオオカミの毛皮が使われ、化粧品会社が売る石鹸、化粧品にはヤシ油が使われ、健康志向の日本人向けにテレビでは体にいいということでヤシ油で作ったマーガリンを食べ、食用油を使うように宣伝しています。そして、大半の日本の消費者は現地で何が起こっているかをまったく知らないうちにダガット村の住民生活を奪う加害者になり、モンゴルやシベリアで野生生物を絶滅させるために協力しています。

 何とか私の担当しているセガマ河下流域に関わる人々だけでも生産者と消費者、生活者と行政官、政治家みんなが手をつないでそれぞれの人の生活と消費する産物に責任を持った暮らしが出来る社会の基盤を作りたいと思い、残りの任期を過ごします。

 湿原の中での生活は皆様にとって蚊、ブヨ、ヒルの来襲に会い、便秘になるなどとても不便で不安なものだったと思います。皆様に十分なサポートをできず、私の考え方だけを押し付けた旅行でご不満や怒りを感じたことも多々あったと思います。これも2年間の任期中に何とか具体的な保全の道筋を確立したいという私の焦りが原因になっていると思いますが、皆様の温かい心でご容赦いただけますようお願い申し上げます。

 今回の皆様のご訪問で現地のレンジャー連中も積極的に関わるようになってくれそうですし、村の人たちも彼らの生活と文化にプライドを復活させてくれそうです。来年には野生のオランウータンの追跡を始め、ゾウの移動情報について無線で把握し、訪問してくれる人がボルネオの顔である動物を確実に観察できるような仕組みを作って行こうと思います。もし、皆様のお友達やお知り合いの方で今回のような経験をしたいという奇特で暖かいお心をお持ちの方がおられましたらぜひともご紹介ください。

 私一人の力ではなんとも出来ない大きな問題に取り組んでいますが、皆様の暖かい協力を得て一歩でも前に進みたいと思っております。

今後ともティドン族ダガット村の人たちとヘルマンを始め現地のレンジャーのことをよろしくお願い申し上げます。

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