今度はCOP7にのりこみだあ!
生物多様性条約(CBD)第7回締約国会議(COP7)で BBEC活動を展示

2004/02/11
草野 孝久

生物多様性条約のCOP7は、2月9日から20日間の会期で、マレーシアの首都クアラルンプールで開かれています。主催者側の発表によると3500名ほどが参加する見込みとのことです。
 私たちサバ州の自然保全関係者は、この機会に自分達の取り組みを世界に向けて発信しようとの意気込みで、この国際会議に参加してます。とはいえ、政府代表団に加わるわけではなく、展示やサイドイベントで自分達の活動の内容や成果を発表し、参加者たちにメッセージを伝えるのが狙いです。

いろんな国際条約の会議は、こうした様々な国際NGOや各国の団体に展示やサイドイベントの場を用意しています。とりわけ生物多様性条約では、温暖化やワシントン条約などに比べ利害をぶつけあう課題が少ないためか、自由でなごやかな雰囲気があります。 国連機関や先進国のほかに、WWF, Conservation International, Greenpeaceなどの国際的に知られたNGOのほかにも50近い大小の国際NGO、企業などが展示を行っています。

 一番大きなスペースは、国際的な8NGOとUNDPが共同で開催している「Community Kumpon」(地域社会村)と名図けられたサイドイベント会場です。こちらには、中南米、アジア、アフリカ、そして北米などの少数民族や、辺境の地の村落代表や彼等を支援したプロジェクトの紹介が展示され、連日、村落開発と生物多様性保全に関するテーマのセミナーやワークショップが開催されています。

 次に大きなブースはマレーシア政府のもので、展示会場の中央部を占め、マレーシアの素晴らしい自然とその保全への取り組みを紹介しています。展示されている大きな写真は、私が青年海外協力隊員(JOCV)としてフィリピンに派遣された時の同期隊員でカメラマンの菅原伸一さんの撮影したものです。素晴らしい写真で統一され、洗練されたブースになっています。私たちも当初はこのブースの一部にまぜてもらう計画で、マレーシア連邦政府の科学技術環境省のCOP7担当者たちと交渉してきましたが、統一されたコンセプトの展示の中にBBECがはいるのは難しいと判断し、個別のブースを持つことにしたわけです。

 BBECの展示ブースは3つの小ブースに分かれています。
 
 展示会場入り口から歩いて最初に目に入る部分は、BBEC紹介のビデオをプロジェクターで一つの壁に上映してます。このビデオはサバの自然の素晴らしさや、生物と民族の多様性、それを守るためのBBEC活動を紹介するものです。詳しい内容は展示しているポスターや配付する資料で分かるので、このビデオは会場内を通行していく人たちに足を止めてもらい、ブースに入りポスターや資料を読んでもらうための導入の役割を担ってます。3分間の短いもので、繰り返し上映してます。映像と音楽でしっかりサバのイメージを伝えることに注意し作成したものです。これまで貯めていた映像中心に編集してもらったので画像は余り上質ではありませんが、なかなか良い仕上がりです。音楽は、サバの作曲家アブバカルエラ氏のオラン・キタ(私たち)というサバの民族色豊かで土着のゴングの音でパンチの効いた曲を、彼の了解を得てバックに流しています。

第1と2のブースでは、BBECの全体的な構想と、それぞれのプロジェクトサイトでの活動と成果を写真と簡潔な文章のポスターで説明していきます。特に、生物多様性を保全するための地域住民と共同で行う活動を中心に説明する内容となっています。今回のCOP7では、総会開始の冒頭での基調講演や議長挨拶がいずれも、貧困と生物多様性損失の関係に言及し、地域社会の保全への取込みを強化すべしきであるとの内容があったので、我が意を得たりと思っています。いずれのブースにも、配布用と閲覧用の資料を並べています。第1ブースには、私たちの国際セミナーとその後の視察ツアーの受付を行うためのデスクを設けています。国際セミナーのロジ(航空券手配やホテル予約など)を委託した会社がこのブースに配置したのは、サバで働くデンマーク娘。なぜ日本とサバの協力を展示するブースで受付をしているのがデンマーク娘なのかと不思議がりながらも、彼女のチャーミングさに惹かれてよってくる男性参加者たちも多く、この作戦は成功です。

第3のブースには、JICA本部の森林・自然環境部が作った世界中で展開されるJICA支援プロジェクトの紹介ポスターと資料の配布コーナー、そしてDANIDA(オランダ政府国際開発庁)の資金協力でフランスのNGO:HUTAN(森)とサバ州野生生物局が行っているキナバタンガン・オランウータン保全プロジェクト(KOCP)のポスターとテレビ・ビデオ展示があります。KOCPの若者たちは、オランウータンのぬいぐるみを着て会場を回るので大の人気者。マレーシ アの環境大臣が訪問した時に新聞記者のカメラ・フラッシュを浴びていたのをはじめ、欧米やアフリカの参加者たちが入れ替わり一緒に写真を撮っていました。

今回の展示は、サバ州科学技術室が中心となり、サバ大学、野生生物局、公園局、サバ財団などが協力し、作業を分担で準備したものです。このため何度も会議を開き、コンセプトを話し合い、各機関が持ち寄ったポスターのでき映えや、ビデオの内容も吟味しあい、最終的には、「編集」の協力隊員(JOCV)今村志保さんがプロタッチの仕上げをおこなって完成したものです。これ自体が、環境啓発の一つの演習になりました。これまで地元向けに作成するポスターで気になっていた質の低さを、今回は国際向けだぞといって改善できましたが、これが定着していくかはまだ分かりません。

 今回の展示は、DANIDAがサバ州で行ってきた野生生物局能力向上プロジェクトとの共催で行っています。オランウータン・プロジェクト(KOCP)の展示にかかる経費はDANIDAが提供してくれました。おかげで、KOCPの現地スタッフ6名もこの国際会議に参加することができました。BBECの方は、科学技術局、野生生物局、サバ大学、公園局がそれぞれのスタッフを交代で派遣し、訪問者への説明に当たらせています。JICAはカウンターパートへの国内旅費を出さない方針なので、彼等の出張経費は全て州政府か大学から出ています。

 さて、この展示の成果のほどは如何に。
 最初の1週間で2000人以上が会議場に訪れたとのことですが、その半分以上は展示場をひとまわりし、わがブースにも寄っていったと思います。用意した資料はすでに1000部近くがなくなりました。会場でJICAといえば、「ああ、あのサバでやってるやつね」といってくれるようになってますので、知名度は上がり、世界に広報するという点では成功していると思います。

特に、この展示に向けて、BBECの2年間の活動と進捗、ここまでの成果をまとめた「WORKING TOGETHER TOWORDS BIODIVERSITY CONSERVATION(生物多様性保全に向かって共に活動する)」と題した100ページ弱の報告書 を印刷し配っていますが、これを読んで我がブースを訪れ、アプローチやJICAの援助について質問していく人が何人もいたとのことです。この本は作成に3か月以上かかり、各コンポーネントの協力を得ることや統一した文体を作るなどに苦労しましたが、こうして飛ぶように世界の自然保全関係者が持っていってくれると、疲れもいっぺんにふっ飛びます。これを通じて、総合的な保全への取り組みが重要であるという私たちのメッセージが世界中の多くの人たちに受け止められることを願います。

これまで作成した15の出版物も展示してます。こちらは残りが少ないので配布用には持ってこず、「閲覧用です」と張り紙をしていたにもかかわらず、最初の日に2冊が持っていっていかれてしまいました。「欲しい」「売ってくれ」という人が何人もやってきたとの報告を受けました。交代に後から入ったスタッフが人気の高い本を数部づつもってきて、再度訪問してくれた方々に差し上げると大変に喜んでいたとのことです。私がブースにいた時にもロシアのNGOのマネージャーという女性がやってきて、「生物採集とインベントリー」のテキストをロシア語に翻訳して良いかといわれた時には、うちのスタッフたちは戸惑いながらも誇らしげでした。

 この展示場を訪れたマレーシア国立の政策・国際科学研究所の職員から、彼等が主催するサイドイベントでBBECについて講演して欲しいとの依頼も受けています。

 何よりもこの展示を行ったことで、各機関の若手職員がこういう大きな国連レベルの会議会場に足を運び、その雰囲気を感じ、本会議を聴講したり、サイドイベントに参加し、世界中の保全関係者と話すことで、国際的な自然保全の動向を知ることができます。自分達もその潮流を担う一員であるとの意識を持つことができます。加えて、展示の説明役を演じることにより、自分達の活動であるBBECに誇りを感じ、オーナシップも向上します。後半に入り各機関とも派遣要因を交代させましたが、会議の総括に向けて特に各国政府関係は高官が入ってくるし、NGOのデモンストレーションも熱を帯びてきますので、後半の説明役たちに与える効果も楽しみです。

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