地域行政主導のネイチャー・プログラムの実施
2004/02/07
参加型自然環境保全専門家 坂井 茂雄
クロッカー山脈公園に建設していたネイチャー・センターの開所式が2月6日に行なわれました。また開所式に先立ち4日から5日にかけて、環境教育パイロット・プロジェクト「ネイチャー・プログラム」が実施されました。今回は、その2つの行事の報告です。

1. 地域行政主導のネイチャー・プログラムの実施

ネイチャー・センターは、将来サバにおける環境教育を提供することが一つの展望ですが、施設(ハードウエア)と共に、ソフト(活動内容)の充実が必要です。今回の環境教育プログラムは、(1)参加した生徒・教師への環境教育、(2)実施する側(ファシリテーター)の研修と訓練、(3)センターのお披露目と広報、(4)参加者からのフィードバックと将来計画の作成、(5)今後の活動を見据えた組織・システム作り、などを目的として、パイロット事業として実施されました。今回、プログラムに参加したのは、センターの地元であるケニンガウ郡の6つの中・高等学校の生徒約30名と、引率の教師8名でした。

活動内容は、周りの森林でのフィールド学習、ネイチャー・ゲーム、夜間と夜明けの自然観察、教室での授業、シダ園や展示場での学習、そして参加者からのフィードバック(話合い)などです。センターの周りには、原生林や二次林があり、センター周辺の自然が一番の教材です。地元の教師・生徒の多くにとっても、森や植物園で説明を受けるのは、始めての経験だったようです。一部のテントでは蚊が出たこと、夜冷えたこと、野外学習ではヒルに食われた生徒がいたことなど、苦労した参加者も居ましたが、毎日天気に恵まれ、すべてがつつがなく終了しました。

今回の目的の一つには、これからの展開を見据えた環境教育の組織・システム作りがありましたが、ケニンガウ郡役場に新設された環境課が教育省や学校との調整役を務め、サバ公園局がファシリテーター(指導員、ガイド役)を提供し、そしてJICA/BBECが仕掛け・牽引役になり、3者が連携してプログラムを実施しました。地域の行政がイニシアチブを発揮してくれたので、生徒・教師のリクルートや平日に生徒を参加させる手続きなど、大変スムーズに進みました。

活動の一環として、参加した生徒・教師、またファシリテーターからのフィードバックも得られたので、反省点や課題を今後の活動に生かし、より充実したプログラムに発展することが期待されています。また、それぞれの関係者が成功体験を積めたことも大きな収穫です。今回の活動の詳細、課題や教訓、これからの展望など、BBECの日本語ウエブ・サイトに追々掲示していこうと思います。

2. 高校生のスピーチが冴えたネイチャー・センターの開所式

環境教育パイロット・プロジェクトに続き、ケニンガウ郡役場、サバ公園局の主催によるセンターの開所式が、2月6日に行なわれました。当日は主賓として環境・観光省の副大臣を迎え、約550名の参加者を動員してにぎにぎしく執り行われました。

スピーチに続き、記念プレートへの署名、展示室の視察、昼食、その後、シダ植物園と昆虫園への探索と続き、開所式は無事終了しました。特記事項として、主賓のスピーチのおまけとして、ネイチャー・プログラムの参加者を代表して、生徒1名と教師1名もスピーチを行ないました。形式を重んじるマレーシアの式典で、生徒もスピーチをしたのは画期的なことだったと思います。それぞれのスピーチとも環境保全を主張し、特に16歳の高校生のスピーチは堂々として、マレーシアの将来は明るいと感じました。

このネイチャー・センターに続き、もう2棟のサブ・ステーションが完成間近です。公園コンポーネントではこの2年間で5棟のステーションが出来る事になります。いずれも日本の資金的な援助は資材購入費だけで、設計・工事施行、周辺施設の建設に関わる経費はサバ州政府の負担ですので、マレーシア側のオーナーシップもしっかりしているのですが、急激に施設(ハードウエア)建設 が先行しており、ソフトウエアが追いついていない感があります。したがって、ソフトの開発がこれからの急務です。2年後、5年後、10年後と、このネイチャーセンターや他の施設がどのように活用され、どのような効果を生むかで、BBECプログラムの真価が問われることになるのだろうと思います。

この時期に合わせて、釧路国際ウェットランドセンター事務局長の新庄さんに来ていただき、サバ州内の自然環境施設や展示場を調査してもらい、展示や活動プログラムについての助言・指導を行っていただきました。クロッカー山脈公園のネイチャーセンターについても、開所式直前に展示の仕方に指導頂き、いろいろと改善をさせていただきました。

こうした活動を通じて、公園内の施設を有効に活用していく戦略を公園の運営管理計画に盛り込むとともに、パイロット活動を通じて人材育成や組織能力の向上もはかっていく所存です。

上へ
閉じる

JICA