「保全すべき種から行動を考える」ことから、「保全する人から考える行動」への発想転換
2003.9.24
坪内俊憲
1年間の経験、適切な現状把握、そして成功、失敗例を吟味して、BBEC生息域管理コンポーネントは今後の計画を見直した。保全生物学的な貴重種:Key Speciesの生息域を同定し、その生息に必要な地域を新たな保全のための網をかけていくというアプローチは生息域減少の原因となっている活動を止めることはできず、関係者全員を共通の土俵に上げることはできないと判断された。資本家、政治家、行政官、地元住民が共通の認識を持ち、野生動物の生息域を保全するという方向に向いてくれるためには、伝統、社会、経済的なアプローチを組み入れることが不可欠であった。言い換えれば、保全する種から行動を考えるのではなく、保全する人から考える行動で、その行動の背景として種の科学的な知見を組み込もうということである。

テナガエビ漁獲の良好な維持、コミュニティ組織主体の保全エコツーリズム開発、資本家による保護区周辺の野生動物農園とその観光開発、観光客とレンジャーによる動物モニタリング、レンジャーによるモニタリングと地域住民へのサービス、地域住民による密猟などの取り締まり。どのようにしたらこのようなことを実現できるかを考え、計画を大幅に変更した。

BBECは日本政府の技術協力として実施されている。アドバイザーとして勤務している専門家は一時的居住者であり、文化的にも社会的にもよそ者であり、地域の野生生物、生物多様性保全に将来までもに対しては責任を持つことができない存在である。自然、資源、生物多様性をどのように保全していくかは、マレーシア、サバ、そして、地域社会に所属している人たちが、成功しても、失敗しても責任を負っていかなければならない。資本家専制主義のように見える社会においても、資本家は決して一時的に滞在しているよそ者ではない。資本家が行政、地方政府、地域住民とどのように野生生物、その生息域の保全を考えていくかが社会全体の鍵である。

援助であるができること、言い換えればよそ者ができることは比較的閉鎖された複雑な社会でどれだけの保全という選択肢があり、それらを実証し、社会全体が変化、発展していく可能性があるかの材料を提供することであろう。BBEC生息域管理コンポーネントの活動がどれだけの選択肢を地元住民、行政、そして資本家に提供でき、そこに科学的な知見を組み込むことができるか、これからさまざまな試行錯誤が待ち受けているであろう。

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