環境啓発:新たな局面へ
2003/5/8
草野 孝久
1.<連邦政府教育省を巻き込む>


先日、連邦政府教育省サバ州局長カメル氏に初めて会いに行きました。自然保全の環境教育促進活動を小中高校の先生達に行うことを決めたからです。サバ州には3万人近くの教師がいます。カメル氏はその3万人を束ねる責任者です。

環境啓発コンポーネントでは、この協力を開始以来、近年サバ州で行われてきた自然環境保全キャンペーンを事例研究し、長所欠点を研究したり、サバ州民の環境意識を調べてきました。その結果自然保全への関心や知識の低さ、啓発事業の計画の甘さや目的や成果を明確にしてないもの、評価を行ってないものなどが多いことが分かってきました。自分たちもなにがしかの環境教育事業を実施してきたこのコンポーネントのメンバー達には、なかなかつらい指摘になったようです。

4月、関西大学の久保田賢一教授(「開発コミュニケーション」の著者)に来ていただき、環境意識・知識を伝えるためのコミュニケーションのあり方を指導して貰い、ターゲットグループを選択するワークショップを行いました。その結果、第一の啓発のターゲットとして教師に焦点を当てた活動をして行くことに決め、そのためのプロジェクト・デザインを井口専門家がファシリテーターで纏めました。

これを現実に動かすためには教育省の協力が不可欠です。しかし、教育省はサバ州政府の組織ではなく、連邦政府の直轄です。このプログラム協力の事前調査の時点でも、教育省を実施機関に加えたい旨、私たちは申し入れたのでしたが、連邦政府機関とあって、サバ州政府の人たちは二の足を踏み実現しなかった経緯があります。

しかし、1年間の活動の結果として、「環境教育は次世代を担う子供に行うことが一番大事」そのためには「教師の環境意識を変えなければいけない」「教師の行動、つまり環境教育を積極的に行う先生が増えることを目的にしよう」と変わってきたわけです。そして、教師の意識改革や自然に関する知識向上、あるいは教材のニーズを明確にしていくためのワークショップを実施していくことになったわけです。

プロジェクトの作業部会長を務めるモクタール科学技術室長と一緒に、このことを話すと、すでにワークショップに参加して私たちと一緒に計画を立てた教科開発専門官のマリア氏が話していてくれたものと見えて、カメル局長はすぐに賛成してくれました。局長は、4月に日本に行ってJICAの本部にも行って来たそうで、日本の技術協力にも理解がありました。


2.<官房長との企み>

今日の午後サバ州官房長ムスタファ氏に久しぶりに会いに行きました。3月下旬にサバ州主席大臣が替わった後、彼は超多忙でまったくつかまらなかったのですが、ようやく余裕ができたようです。

諸々の話の中で、環境啓発コンポーネントの新たな局面について報告すると、「新主席大臣や前主席大臣で現観光文化環境大臣らももっとこのBBECに出てきて貰い、もっと大きな動きにしよう」と言うことで意見が一致しました。同席したモクタール室長から、サバ州の環境教育ガイドラインを作る話を提言し、大物政治家達や財界人を呼んで自然保全フォーラムを開催しようと言う話にもなりました。

5月2日に、環境家発コンポーネントでは、教師の次に重要なターゲットグループとしたジャーナリストや開発業者、NGOなど約50人を招いたワークショップを行い、どうすれば彼らの環境意識が変わるのかを議論し、そのためのキャンペーン計画を練りました。

参加してくれたのは、環境に関心のある人たちばかりですので、関心のない人たちを非難はするのですが、具体的にどうすればいいのかということについては、諸論紛々。特に商工会議所の副会長さんなどは、「だいたい生物多様性でなにかビジネスは生まれないのか、そう言うことがなければ我々の業界は関心を示さない、もっと皆さんが出かけていって話してくれないと彼らがこんなワークショップに出てくるわけはないよ」などと厳しく指摘してくれました。

ともかくも、こういう開発側にいる人たちを巻き込んで大きなうねりにしないと、環境啓発の効果は出ないというのが参加者の認識として固定してきたことは非常に面白い局面になったと思います。

そんなことを、官房長に話すと、フォーラムを使って大物達に大勢の前で環境と開発を議論して貰うのは面白いから、企画してみようと言うことになりました。同席したサバ大学のマリアティ教授も賛同してくれました。

 

さて、大きなうねりを仕掛けるという新たな局面に入った「環境啓発コンポーネント」ですが、如何なりますか。

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