BBECプログラムの参加型モニタリング評価を行って
2003/5/6
石田 健一*
*東京大学海洋研究所:2003年3〜4月に、この事業の参加型評価のために派遣された。

*BBEC= Bornean Biodiversity & Ecosystems Conservation Programme in Sabah「ボルネオ生物多様性・生態系保全プログラム」


サバの人達によるサバの人達のサバの人達のための生物多様性保全と生態系管理。BBECが切り開く地平はそこにあり、と筆者は解釈した。BBECとは、主体性の担保、大きな舞台の機能化、道具としてのPCM、という3つの翼がうまく機能している希少な実例であろう。10を超える実施機関を束ねたBBECという土俵。走り出す時に必要なエネルギー量は巡航速度を保つエネルギー量より大きいが、実施者が開始直後からフルスケールで活動を行ってきたからこそ、PDMの改善をするだけの材料もあり、住民を含む地域の関係者をターゲットグループにでき得る地点まで旅してきたのだと言えよう。

目に見える(tangible)成果(例えば多数の出版物)を確保して、なおかつ、実施者のマネジメント力をPCMで鍛え上げる。関係省庁が連携統合するという「実質的かつ本当の」横のつながり、及び、生態系保全と生物多様性の政策への影響という縦方向。BBEC舞台は3次元であり、両方向へプラスの影響を確保しつつある。それは、開発協力の悲願でもあろう。また、3次元構造を走る神経系は、ワーキンググループ、コンポーネント長会議、事務局、運営委員会(steering committee)であり、必要な酸素はワークショップ、PCMなどにより供給される。

一貫した実施中の運営管理を行うためだけではなく、目的志向(objective oriented)であるPCMが参加者を目的設定とその為の活動に引きつけ、参加者による気付きと改善の手段をうながす。PCMはこう使えるのだ、という手本が形成されつつある。もちろん更に改善の余地はあろうが、計画から運営管理ひいては評価までPCMを使いこなしている実施例は、筆者の知るかぎりきわめて少ない。使いにくい道具と言われることもあるPCMだが、使い手にも問題があったのだ、と筆者は考えている。

ワークショップ屋の冥利に尽きる経験もさせてもらった。関係者、実施者、に現れる変化を見た時がそれである。目標の再設定が決まらなくて夜も10時になった時、悩み続けた大学教授は最後に決断した。公園管理の計画場面では、責任者が裃(かみしも)を脱いで議論の矢面に立ってくれた。環境啓発分野では、ある女性森林官が一言「今までだって我々は積み重ねてきた。失敗して全て失うわけではない。だから新目標に賭けてみよう」と。生息域管理分野では、対象地域を広げることでよりプログラム目標への寄与度を高めるべきであるという考えと、現状の「今の人員と資産で管理できる」地域を主張する戦い。

Well begun is half done(うまく始められたら半分終わったと同じ)。これは達成されたと見る。主体性、という中には、運営管理の主体性も当然含まれる。進捗管理を測る参加型の道具もできた。現場の関係者(日本人専門家も含む)が自己評価とふり返りを行い計画を改善し実行するという小さなサイクルを「我が事」として充実させていくこと(いわば考える力、ふり返る力、自分でやれることを決めていく力の育成でもある)が、サバの人達主体で生物多様性と生態系保全ができるようになるかどうかの重大なカギを握っている。今後の課題はそこにあろう。最後に、滞在中関係者のみなさんのご協力に感謝する。

上へ
閉じる

JICA