生物多様性の研究者を育てる。
2003年3月
橋本 佳明
BBECで、私は主に、1)生物多様性インベントリーと分類学研究の専門家育成、2)博物館コレクション設立のための基盤整備と専門家育成、3)データベースとネットワーク構築のための基盤整備の3つのことに取り組んできました。


©UMS

私たちが責任をもって、ボルネオ島の生物多様性を利用しながら、同時に保全を目指すためには、1)どんな生物がいるのか、どこにいるのかを調べ、2)その結果を分類整理し、記述して、3)誰もが利用できる情報として整備することが必要です。この3つの責務が達成されて、はじめて、生態学者や資源管理者、政策決定者が、同島の生物多様性を生み出した生態系の解明や、その保全管理、資源としての利用、あるいは、保全と農水産業や観光産業との調和に取り組むことが可能になるのです。

しかし、同島には動植物の標本やデータを集め、収集した標本コレクションを研究資料として活用できるように整理・保管できる専門家、そして、そのコレクションを同定し目録を作ることができる分類学者がほとんどいません。また、その情報を管理し、発信・共有するためのデータベースとネットワークの構築も行われてきませんでした。この3つの責務を果たすことができる専門家の育成と、そのための基盤整備がBBECの研究・教育コンポに与えられた課題なのです。

これまでに、カウンターパート達と2回のインベントリー調査実施、収蔵庫施設と標本管理システムの整備、標本管理データベースの講習会、インベントリーと標本管理に関する1ヶ月にわたる集中トレーニングコース、4回の生物多様性情報ネットワーク構築のためのベースライン調査、ネットワーク構築のためのワークショップなどを実施してきました。また、活動の成果をまとめた2冊のテキストと2冊の報告書も、カウンターパート達と一緒に作りました。


©T.Kusano

赴任期間が1年ということもあり、ちょっと、いそがしく活動しすぎたかもしれません。カウンターパート達からは、「日本人は、マレー人が5年かかってやることを、1年でやろうとする」と笑いながら、言われたこともありました。これには、「あなたは、もう日本人になっている」と言い返しましたが、本当に良く一緒にやってくれたと感謝しています。

人材育成そのものは短期間にできることではありません。しかし、熱帯生物・保全研究所がそろえた機材や日本が供与した機材をつかって、研究所やサバの研究機関スタッフがトレーニングを実施していく仕組みはできつつあります。この現地でのトレーニングを経た研究所スタッフの一人が、分類学で博士号をとるために日本へ留学することも決まりました。彼が日本から帰ってきたときには、多くの専門家たちが育ち、彼らと一緒になって同島の生物多様性に貢献してくれることでしょう。そして、私もふくめた日本の研究者たちとの友好関係が続き、世界を驚かせるような共同研究の成果が次々と公表される時代がくることを楽しみにしています。


©T.Kusano

 

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