村落社会と共存する国立公園
2003年3月28日
草野 孝久
2003年3月26-27日と2日間かけて行った「クロッカーレンジ国立公園ゾーニング・ワークショップ」の様子をお知らせします。。


このワークショップは、これまでサバ公園局職員と長期派遣の米田・坂井専門家、GIS担当で短期派遣の北浦さんなど日本人専門家とで検討してきたゾーニング案を、州政府関係機関(土地調査局、法務局、森林局、灌漑排水局など)、所轄の郡庁、村落開発委員、NGOなど60名を招待して披露し意見を聞くために実施したものです。公園局からは約20名ほどの職員が参加しました。


このクロッカー公園は約14万ha(シンガポールの約2倍、沖縄本島よりやや大きめ)と、サバ州第一の広さです。公園指定時に境界線に関連した土地利用調査が不十分であったことや、その後境界線を明確に公示しないまま10年以上がすぎたために、現在では公園の境界内に約2万人の人口が居住していることが判明しています。


公園内に居住することはサバ州公園法では認めておらず、また欧米式の国立公園管理方式では居住地や農地を含む方式の事例が少なく対応が難しいため、日本の方式を参考にしながら、ゾーニングによる対処を試みているものです。サバ州内の保護区はいずれも区域内での居住や人間活動を原則禁じてきたので、地域社会が存在することを公式に認めた上でゾーニングを議論するのは、このクロッカー公園が初めてのことになります。


初日は、公園局長、小職の挨拶、観光環境科学技術副大臣の開会宣言で開始し、司法長官が関連法案を説明し質問に答えたりした後、ゾーニングに関する国際的な経験や日本での事例、サバでの事例を、公園局職員や日本で研修を終えた郡長などから発表し、4つのグループでの討論会に移りました。2日目は、グループ討論会を引き続き行った後、各グループの討論結果を全体に発表。


全体討論では、郡長やNGO側から、地域住民の存在を認め対処しようとする姿勢を高く評価しながらも、住民の伝統的生存権・自然利用権を尊重した対応を求める声や、これ以上自然が破壊するのを止める方策として十分な体制を敷くことが提言され、また、土地利用や伐採を許可する役所が公園の境界や環境への影響というものに無頓着であることによる弊害も厳しく指摘されました。最後の全体討論の議事進行は小職に任されたのですが、熱い議論となり、なかなかハンドリングは大変でした。


こうして関係各省各局が横断的に一つの公園の運営管理計画作りに参加できるだけでなく、早い段階からNGO、村落開発委員や郡長の意見を聞く方式を採用したこのワークショップを参加者全員が画期的なものであると高く評価してくれ、今後とも協力しながら運営管理計画を完成させていくことが合意されました。


この様子は、確認できただけでも英字・マレイ語・カダサン語など6紙でも報道されました。TV局も1社入ってました。驚くほどこのプログラムに関するメディアの関心は高まり、連絡が遅れて記事を書き損ねた記者からなじる電話が入ったほどです。


この仕事に赴任する前に、「日本の自然保全なんて大したことがないんだから、技術協力する比較優位性がない」などと、何人かの方から議論を挑まれたことを思い出しますが、そんなことはありません。日本の自然保全の仕組みは、森の中で暮らす人口も多い地域では結構当てはまるのです。元々、私たちの祖先は、欧米文化に比べると、ずっと自然との共生を大事にして暮らしてきたではありませんか。


勿論、簡単にここまでことが進んだ訳ではありませんし、これから解決しなければならない難題は山積みです。公園局内でも現場と本部では意見の対立はありますし、山地村落の情報の少なさや保護と保全の違いへの理解不足などがあるので、米田さんと坂井さんのご苦労はまだまだ続きます。


次の段階として、散在する各村落レベルでの説明会や意見聴衆会を続け、ゾーニングを含む公園管理計画は2004年の3月までには草稿作業を終える段取りです。 

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