マフアの滝を巡る論争
2003年3月16日
坂井 茂雄
<マフアにおける保全と開発の経緯>


写真©T.Kusano

マフア地区の公園内には、立派な熱帯原生林が残されており、また公園内に高さ10mくらいの滝があります。胸高直径が1.5mを超えるフタバガキ科の高木も珍しくありません。また、海抜800mと標高が高いことから、一年を通して、比較的涼しい気候です(日中は暑いですが・・・)。このような観光資源があるために、タンブナン郡は以前より同地区の観光開発を行ってきました。郡議会により、滝の周辺にはバーベキューの施設や更衣所などが建設されましたが、施設は作られたものの、長期的な計画なしに作られた事から、施設が景観をそこない、また施設のメインテナンスもほとんど実施されていない状況でした。つまり、同地区の開発は、やりかけのまま、10年以上も頓挫していました。

また、公園を管理するサバ公園局にしても、ビジター・センターなどの施設整備の希望はあったものの、公園外の用地がタンブナン郡議会と水産局により土地収用の申請が出されていたために、建設用地がなく、とりあえず移動用のトレーラー・ハウスに管理人が寝泊りしている状況でした。結果として、3者の思惑が交錯したまま、ちぐはぐな管理と開発が行われていました。


写真©T.Kusano

<マフア地区における保全と小規模観光開発>


施設整備活動の第2弾として、マフア地区にサブ・ステーション(管理とビジター・センターを兼ねる)の建設が計画されました。具体的には、建設に必要な資材とアイデアのみをJICA側が提供し、他のすべての費用(設計・施工・維持管理、道路整備など)をサバ州公園局が供出する方式です。

これまでの硬直状態を打開し、望ましい管理と開発をするためは、関係者の合意が必要不可欠です。また、サバ公園局としては、サブ・ステーションの用地を確保することが、急務となっていました。

そこで、関係者を集めてのワークショップ開催をJICA専門家が提案し、昨年10月に郡長、郡議会、州政府関係機関、サバ公園局が参加し、ワークショップと協議が行われました。その場で明らかになったことは、


・ タンブナン郡カウンシルは、長年の観光開発の悲願が実現に向けて動き出すので、計画に大賛成であること。また、公園の環境保全には全面的に協力すること。

・ 公園外の土地は、郡議会が放牧用の土地としての使用権を州政府に申請中であること。

・ その他の土地は、水産局が養殖池建設のために州に申請し、土地の使用権を取得済みであること。用地の一部は、すでに原生林を伐採していること。

・ 養殖池の計画は、原生林を伐採し、原木を売ったお金で養殖池を造成することになっているそうです。実際、数年前に一部の原木を切ったものの搬出の許可が州政府から下りずに、伐採した原木はそのまま朽ち果てたそうです。(「そんなことなら、最初から切らなければ良かったのに」と思うのは、私だけでしょうか?)。ともかく、養殖池の計画は、完全に頓挫しているとのことでした。


<協議での合意事項>


郡議会、サバ公園局双方から、マフア地区の第一目標は原生林を保全することが確認されました。また、保全を前提にして、小規模な観光開発を行うことも確認されました。郡議会は、観光開発を地域住民の収入向上に繋げ、利益を地域に還元したいと希望しています。サブ・ステーションの建設用地は、郡議会が使用を申請している土地から、最適な場所が提供されることになりました。また、サバ公園局は、サブ・ステーションの建設をきっかけに、関係機関と連携して、周辺地域でのホームステイなどを計画・実行する意向を伝えました。

すでに土地を取得している水産局は、残っている原生林を切り、その利益で養殖池を作ることに固守していますが、郡長や、郡議会事務局長から、「これ以上、我々の森林を切らないでくれ」と懇願される一幕もありました。


<今後の展開>


マフア地区は、「保全」が第一目的との共通理解が関係者により確認されました。ビジター・センターの建設を手始めに、将来的には地域を巻き込んだ小規模観光開発、公園内のトレイルの整備、周辺でのレクレーション施設の整備などが考えられています。ただし、保全を目的とした施設の整備のために、原生林を切ってしまうのは本末転倒ですので、すでに丸裸になってしまっている土地を有効利用するのが理想です。

この場合、水産局がすでに取得している土地が最善の候補ですが、水産局としては、唯一この郡で所有している土地なので、養殖池と養殖訓練センター建設は長年の悲願なのだそうです。ただし、もし建設するとしても、原生林を切って費用を捻出するのは、保全や水資源管理の面からも、支持される計画ではありません。

限られた資源と、その資源を利用しようとする様々な思惑。州政府や地方政府の中でも、色々な計画があり、誰もが保全を考えているわけではありませんが、今後とも粘り強く、残された自然を破壊しないように、関係者たちに働きかけていく予定です。マフアのビジターセンターに行く道の数km手前には貧しい村落があります。観光で訪れる人たちから何らかの便益が地域の人々に落ちるように、村の生活がゆっくりと発展するような手だてを開発してあげたいと思います。


なお、マフアのビジターセンター建設は進んでいて、今月末にはほぼ外観が出来上がる見込みです。

 

 

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