生物多様性のデータ・シェアリング

2003年2月28日
草野 孝久
生物標本のインベントリー情報、つまり形態、採取場所と生息域の状況、生態、絵または写真、鳴き声、分類ができていれば学名、現地語名、英名などの情報をいかに効率的にデータベース化し管理し、研究者間で共有し、保全担当者等に提供していくかが生物多様性保全の大きな課題の一つになっています。生物多様性条約COP6での合意の下、様々なデータシェアリングのためのネットワーク化が世界中で進められています。とは言っても、ほとんどが先進国での動きで、途上国ではネットワーク化すべきデジタル・データベースが存在しないのが問題です。


例えば、サバ州では4つの機関が主に森林の生物学的調査研究をし、生物標本を収集・保管しています。しかし、私たちの活動の一環で明らかにするまでは、サバ州内には全体でどういう目や科の動物や植物がどれだけ標本として保管されているのかさえ分かりませんでした。調査の結果、57万点強の標本が保管され、分類も保存状況も良いことが分かりました。植物、両生類、ほ乳類、昆虫がそれぞれの機関に何種何点標本として存在するのかも分かりました。


しかし、全体をつきあわせることができないので、サバ州には何種の両生類が見つかっているとか、何種の爬虫類がいるとか、この種はどういう分布をしているとか、そう言うことがわからないのです。この種はどういう生態系で棲息しているとか、どの昆虫とどの植物は同じような条件化に生息しどういう共生関係にあるとか、どういう自然破壊が起きるとどの昆虫が減少するとかの研究に進めません。


国際セミナー第3日目のワークショップでは、こういう話を、兵庫県立人と自然の博物館から来ていただいている橋本専門家から、導入として話して貰いました。その後、GTI(地球分類学イニシアティブ)の日本フォーカル・ポイントを勤められている国立環境研究所の志村さんがロンドンでのネットワーク会議から直行で駆けつけていただき、世界中で生物標本インベントリーデータベースのネットワーク化が進んでいることを紹介して貰いました。


昨日までの研究から保全事業、環境教育までを含めたセミナーとは違い、主に研究者が対象なので、半日で少人数のワークショップです。データベースのネットワーク化は分かりにくい話なので、どれだけ参加者があるか不安でした。昨年一度ワークショップを開催していますが、どこが主導権を取るのかとか、データだけ取られるのは嫌だとかの駆け引きが起き、各機関間の協調体制をどう構築するかが大きな課題でした。これは何もサバだけの話ではなく世界中で同じようなことが起こっているそうです。これでは、生物多様性の研究は進みません。

20人も参加すれば良いと思っていたのですが、60人も出席してくれ、サラワクや半島部との連携の話も出たりで、井口専門家のモデレーターで行われたPCMの目的分析は熱を帯び、1時半まで時間を延長しました。結論を出さずに終えましたが、目的系図は一応できあがり、ネットワーク化つまりデータシェアリングを実現するために必要な活動の大まかなところは明示できました。


今後この標本管理とインベントリーデータ管理のためのアプリケーションを開発し、標準フォーマットでサバ州の4機関をネットワーク化し、アジアや世界のネットワークにリンクしてための準備が少し前に進んだかなとの実感です。


濃い内容と参加度の高い3日間の国際セミナーを終えてホッとしています。自分たちが活動してきたことがどう評価されるのか、活動と成果の違い、どこへ向かうべきなのかなど、CPたちは得るものが大きかったと思います。新聞には英字、マレイ語、中国語の各紙に2日間で10以上の記事がでましたので、自然保全と日本の協力の双方の広報ができました。


事務局員は皆、くたくたで家路につきました。落ち着いたら慰労会をしてやろうと思います。私も少し熱がでて夕方爆睡してしまいました。


明日からは山に入ります。帰ったら、また、新しい報告をお送りします。

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