ボルネオ生物多様性国際セミナーを開催
2003年1月26日
草野 孝久
1.<開催準備>


当プログラムは、2003年2月25日-27日の3日間、国際セミナーを開催しました。テーマは正しくこのプログラムのゴールでもあります「持続可能な自然保全体制を如何に築くか」です。

このプログラムは、「研究教育」「国立公園管理」「野生生物保護区管理」「環境意識啓発」の4つのコンポーネントを包含し、それぞれが独立したプロジェクトとしてプロジェクト・デザイン(PDM)や実施計画(PO)を持っています。更に。この4つを包含した総合的な自然保全(生物多様性と生態系の保全)アプローチを構築するためのプログラム・デザイン(PgDM)を持っています。

PgDMでは、4つのプロジェクトの成果の他に、全体の進捗を有効にモニタリングしていく体制の構築、個々の自然保全関連機関(政府、大学、NGO)の能力を統合し効果と効率を向上させること、そしてこの統合的な自然保全への取り組みを市民に知らせることが期待される成果となっています。

環境保全は、社会の様々なセクターに関係し、行政も複数の機関にまたがり重複したりセクショナリズムが弊害となりがちです。ここサバ州では、州の経済が自然資源に大きく依存し発展してきた社会ですので、かなり複雑な状況です。このプログラムには現在1国立大学、8州政府機関、1NGOが正式の実施機関となり、その他の政府組織やNGOとの連携も行われています。

協力開始後1年、様々なことにとり組んできましたが、この時点で自分たちの事業の妥当性を、他の国の同業者たちとともに考えてみようというのが主旨です。ですから、国際学術会議のようにオープンで発表者を募ることはせず、サバのカウンターパート達が良く知っている東南アジア諸国の保全研究者や実践者達と、日本から私たちJICAチームの良く知っている人たちをゲストとして迎え、講演して貰い討論を行い、より効果的で効率的な保全の方策とは何かを探る計画で準備しました。


2.<国際セミナー開催危ぶまれる>


前2週間になっても体制が整わずヒヤヒヤの連続でした。

なによりも、開催宣言をするサバ州主席大臣の体が26日しか空いてないことが2月11日(火)に判明し、大慌てでスケジュールの作り替えです。

これだけ大きな構想で9州政府組織、1国立大学とNGOの共同プログラムですから、官房長が運営委員長となり睨みを利かしてくれ、なんとか協調体制が保っている訳ですので、国際セミナーともなれば主席大臣が来賓として挨拶してくれなければ格好がつきません。また、今の主席大臣は前観光・環境・科学技術大臣で今でもこの職を兼務してます。つまり、サバ州政界の環境のチャンピオンな訳ですから、なんとしてでも主席大臣に開会宣言をして貰おうと言うことになっていました。その彼の都合が、初日の25日にはよろしくないのです。

しかも、主席大臣が日程変更を言ってきたのではなく、なんと誰も出席を依頼してなく日程を押さえてないことが判明。役割分担や各コンポーネントの準備が進んでないこと、出席者数が確保できてないこと、運営方式や日程、外国人ゲスト決定方法への不満が各所にあり、協調体制が生きてないことも浮き彫りになってきました。特に、サバ大学は連邦機関ですので州側との溝は深いものがあります。州の9機関にしても、もともと分かれる理由があって分離し、管轄を争ったり押しつけ合ったりしているところがありますから、なかなか一つのことを一緒にやるのは難しいようです。どこの国の環境行政も似たようなところがあると思いますが、サバ州は自然資源を売って外貨を稼いできた歴史があるので複雑です。

日本人専門家も、こうしたセクショナリズムに巻き込まれないでやっていくのは難しいようです。自分の所属する機関を擁護する精神構造になってしまいがちです。私は全体の運営管理をしていますが、サバ大学に執務室を貰っているので、州側の人たちにはサバ大学の人間と見られている節もあります。そういうわけで、州政府の入っている建物にもオフィスを貰って、州と大学の両方で執務する準備を進めています。

今回の危機は、協調体制も大分整ってきたと判断違いした私のミスによるものです。当初の計画案づくりと日本からの招待者選びを手伝っただけで、日本人チームは国際セミナーをあまり手伝わなくても良いだろうという態度を取ってきたためでした。実は、そんな甘いものではなく、準備は大学のみで進められ、州側の3コンポーネントはほとんど準備してない状況だった訳です。早速、日本人チームで対策を協議し準備促進を開始して貰いました。

主席大臣の日程は変えられませんし、海外のゲスト・スピーカーの航空便などは既に決まってますので、大臣の挨拶は2日目に行って貰うことにして、日程を作り替えることにしました。

各分科会も、「生物多様性研究の優先課題の選択」や「国立公園のバッファーゾーン設定」「環境意識向上のためのNGOと政府の連携」などのテーマや出席者が固まってきたようでホッとしてます。何とか、恥ずかしくない意味のある「国際」セミナーにしたいと思います。今日の午後、コンポ長会議を開き好転を期します。

彼らの時間軸からすればそんなに焦ることはないのかも知れません。「いまこれだけ準備ができていればじょうじょうだよ」と言う声も聞こえてきます。

3.<国際セミナー大盛況>


準備段階でご心配をおかけした国際セミナーですが、順調に進みました。

この国際セミナーは、「自然保全の効果的なアプローチ」と題して3日間行われています。国際と銘打っていますが、実質的には、このプログラムに参加しているサバ州の政府組織やNGOを中心とした関係者のセミナーに、周辺諸国や日本からのゲストスピーカーを呼んで、プログラム開始1年間の進捗を報告し批評して貰い、ゲストの体験も交えて効果的な保全手法や考え方を学ぼうというのが企画の主旨です。

第1日目は、102名が参加。アセアン諸国からゲストスピーカー6名。マレーシアの他州から数名。日本人が当プログラムの専門家にゲストスピーカー、自費参加、JICAの専門家養成研修員チームを併せて21名。ほかがサバ州内の政府職員、NGOメンバーなどです。このうちヨーロッパ人が10名ほど、なんとか国際セミナーらしい参加者になりました。

 午前中は私の司会で4コンポーネント長による進捗報告。サバ州官房長(プログラム運営委員長)の基調講演では、サバ州はかつてマレーシア第一の経済を誇っていたのにいまでは最下位の経済状況にあること、その原因は自然資源の管理がずさんであったことを反省し、このプログラムを契機として政府一眼となって、開発と保全のバランスを取っていく覚悟を述べました。

ゲスト・スピーカーからは、

(1)釧路ウエットランドセンターの新庄さんから「丹頂の保護に関する住民参加」

(2)フランスのNGOウータン(森)のイザベラさんから「キナバタンガンでの地域社会を基盤としたオランウータンの保全」

(3)西マレーシアのNGO: Malaysia Nature Societyのリムさんから「自然保全に関する市民の意識向上」

(4)人文自然研究センターの中静さんから「サラワク州での林冠生物多様性研究」

(5)メラワルマン大学のアグンさんから「カリマンタン(インドネシア側ボルネオ島)での森林保全」

(6)インドネシア科学技術院のスガルジトさんからは「西ジャワでの生物多様性保全」

(7)アセアン生物多様性保全研究センター(在マニラ)のタクソンさんからは「アセアンの保全研究と人材育成」

(8)兵庫県立コウノトリの里の池田さんからは「コウノトリの里復元に関する複数の専門分野を越えたアプローチ」の事例が発表されたところで6時近くになり閉会。予定ではもう2発表があったのですが、熱心な議論が続き時間切れで、明日に持ち越しとなりました。

当日最後の司会を担当した地球樹冠プログラムのスティーブンさんは、「この手の会合は残る人が半分もいれば良い方なのに、ほとんどが最後まで熱心に議論に参加した」ことに驚いていました。閉会時に90人以上残っていたことには、私も感激しました。実際、非常に中身の濃いセミナーです。

翌日の地元紙2紙に大々的に報道されたのが確認されました。1紙は、1面にプログラムのロゴを大きく掲載してくれました。

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