タンブナン郡役場での12日間
2005/3/3
南雲 孝雄(JICAマレーシア事務所)

  サバ州の州都コタキナバルからクロッカー山脈を越え、車で1.5時間山道を走ったところにタンブナン郡がある。陽射しは強いが標高が高いため涼しく、ちょうど日本の軽井沢といった感じ。気候は良いが、閑散とした街並みと道路を横断する牛を見ていると少し目眩がする。郡役場での表敬訪問を済ませるやいなや、「じゃあ、今日からここで2週間頑張って!」と笑顔の谷口調整員。ドライバーは少し気の毒そうに私を見つめる。コタキナバルへとんぼ返りで戻る谷口氏を乗せた4WDを見送り、しばらく呆然とした後、近くの雑貨屋で食料と蚊取り線香を買い、小高い丘を登り宿舎へ向かった――。

 このように始まった12日間に及ぶ単独での案件発掘調査は、初めのうち自分は何ができるのか不安でしたが、まずは1日4回のお茶飲みと頻繁に行われるタパイ(日本酒に似た地酒)一気飲みを通じて、少しずつ人間関係を構築していきました。次に現場視察とヒアリングから、@役場のスタッフ構成や予算、意思決定等、A郡が抱える問題点、B地域住民の要望、の3点を整理しました。一方で州政府が過去に行った社会経済調査やJICAのフィージビリティー調査報告書を精読し、ヒアリング内容を補強しました。特に住民のヒアリングから、ホームステイにチャレンジしたいというニーズが確認でき、私のカウンターパートである郡役場のジュアニス博士と一緒に、コミュニティー中心のホームステイ・プログラムを作ることにしました。この計画の中では、ホームステイを実施するための組織(観光協会)強化を念頭に置き、@プログラムを実行する際の人員配置、A計画実施のための予算、B短・中・長期プランの3点を重点的に固め、できるだけ実現可能な案件になるよう私なりに工夫しました。案件発掘調査後はコタキナバルに戻り、公園局のスタッフとJICA専門家、同行してくれた郡役場のスタッフの前でプレゼンを行い、貴重な意見を頂きました。

 この12日間にわたる案件発掘調査を通じて、まず援助の現場を体験できたことが私にとっての最大の収穫になりました。それに加え、援助の最前線にいるJICAの専門家や青年海外協力隊員の苦労も肌身で感じることができました。その他にタンブナンでの気づきは、@山岳の村落では貧困が存在しており、マレーシアでも、援助の余地がまだ多分にあること、Aタンブナンの人々は本当に親切であり、初めからよそ者の私を受け入れてくれたこと、B何か新しいことを始めるには、十分な準備と多くの時間が必要であること、などが挙げられます。

 今後数十年と続くJICA人生の中で、最初の1年目で現場を経験できたことに、関係者の皆様に感謝いたします。私自身微力ながらも、今後ともJICAに関わる方々が気持ちよく仕事できるように業務でサポートをしていけたらと考えます。

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