ダガット村で得たもの

松村めぐみ
2004年の8月5日。きっと一生忘れられない日になることでしょう。ダガット村でのエコツアー初日、わたし達は驚くほどすごい数の初体験をしました。そのひとつひとつが、今も鮮明に脳裏に焼きついています。これからもきっと。

 ダガット村に着くまで、空港から車で4時間、さらに船で2時間かかりました。道のりを経るにつれ、まだわたしの一生で見たこともない風景が広がっていきました。そこはテレビでは見たことのあるような風景ですが、現実世界とテレビとでは天と地ほどの差がありました。360度のマングローブ林。そこで吸う空気、におい。動物達の声。それは、わたし達が住む大阪では想像も出来ないほどの別世界です。しかしそれは事実、同じ地球に存在するのです。いや、変な言い方ですが、それこそ本当の地球なのだと思いました。マングローブの中で暮らすにつれ、その思いはどんどん深くなりました。

 ダガット村に住むティドン族の方々は暖かい笑顔の持ち主ばかりでした。その暖かさは村に着いた当初から伝わってきていました。この暖かさに触れ、「わたしはこの4日間、この村でやっていける」という安心と「わたしがこのエコツアーで得るものは想像よりもはるかに大きいものだろう」という期待を持つことが出来ました。

 そのとおり、わたしがこのツアーで得たものは想像よりもはるかに大きいものでした。マングローブ林の中へ足を踏み入れたり、川へ漁に行ったり、サロンという布を使った水浴びをしたり、とれたての川の幸を使ったお料理を手で食べたり。夜は満天の星を見上げたり、蛍の集まる木を見たり。ここでは挙げきれないほどの体験をしました。そのほとんどが、きっとエコツアーでしか体験できないことばかりでした。

 自然や文化と触れ合って得た「体験」のほかに、ティドン族の方から直接得た「感覚」があります。言葉を越える何かです。わたしはろくにマレー語も勉強せずにこの村にやってきたので、うまく会話が出来ませんでした。しかし、村の小さな子どもたち・同世代の青年たちをはじめ、村の人たちのほとんどと「言葉を使わずわきあいあいと語れた」という、うまく表現できない感覚があります。

先ほど申したように、村の人たちはほんとうに皆暖かいのです。村の人たちとわたし達のいちばんの違いは、村の人たちの暖かさはつくられた暖かさではないところです。笑顔がつくりものではないところです。それは、村の人とあいさつを交わすだけで理解できる感覚です。

これから先、いろいろな方がこの村に足を運ばれると思います。その方たちがわたしと同じこの感覚を得られることを祈っています。また、このエコツアーでやってくる方たちが、ティドン族にとってエコツアー「客」にならないように・・・村の人たちの笑顔がつくりものにならないように・・・わたしの心に焼きついているこのティドン族の暖かさが、いつまでも失われないように祈るばかりです。

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