カエルな政治家たち
2004/3/23
草野 孝久
全国統一選挙が終わった。町は虚脱感に溢れている。役所はどこもガラーンとして開店休業状態。明日は、与党連合の大勝利を祝って、祝日になってしまった。
「サバの選挙はカーニバルのようなものだよ」官房長官が2週間ほど前に言ったとおりだ。町や道路はポスターやバナー大学の文化祭で見るようなロケットの模型など、政党のシンボルで飾り立てられた。どこかの国のように危険なことは何もなかった。
数カ月前から人々は選挙のことをあつく語り、いつくるかいつくるかと手ぐすね引いて待つ。
政府はなかなか選挙の日程を発表しない。
与党連合の守りを固めていたようにも見える。
公示される前から、どこの党が与党連合に入る入らない、与党連合はどう議席を割り振るかが大きな関心ごとだった。
どうやっても野党に勝ち目はないように見えた。
与党連合が選挙区ごとにどの党の候補を立てるかを割り当てると、その割り当てに入れなかった数人の候補は与党を辞めて無所属で選挙に出た。党側は、それらの候補を除名した。

サバでは、コロコロと所属する政党を変える政治家がいるそうな。
そういう政治家をここでは「カエル」とよぶ。
BBECではサバ大学で「カエル展示会」や「両生類セミナー」を実施したが、この手の時には必ず話題になるのがこの話だ。
「Frogs of Borneo(ボルネオのカエルたち)」という本の話をしようものなら、公務員は腹を抱えてゲラゲラと笑い転げる。
ボルネオのカエルたちと言うと、政党をコロコロ変える節操のない政治家たちのことを揶揄する意味に聞こえるので、おかしくてたまらないのだと言う。

1996年までサバ州は、いつぞやのメルマガで紹介したパイリンさんが党首の「サバ統一党」が治めていた。サバ統一党は、カダサンドゥスン部族を中心とした地元原住民たちの支持を得て10年近く安定していた。しかし、国政はマハディール氏による「UMNO」を中心に「バリサン・ナショナル」という与党連合が勢力を伸ばしていた。1996年の選挙では、サバ統一党が僅差でサバ州議会を押さえたのだが、選挙結果が公表され組閣に入ろうと言う矢先、3?4名の当選者がバリサン・ナショナルに寝返ったのだそうだ。それでパイリン内閣は崩れ、今の与党連合が首席大臣のローテーション制で治めるようになったと言う。その時、寝返った政治家たちは、まるで一つの蓮の葉から次の蓮の葉に飛び移るカエルのようだと言うわけ。その後も、その時に風向きを見ながらピョンピョンと政党を変える政治家が結構な数いるらしくて、サバでは「フロッグ」というとカエルな政治家たちのことを意味する。

それもそのはず、政党間の政治的立場はあまり違いがなく、今回の選挙でも、どの候補も「私が当選した暁には、この地区に開発をもたらします」という演説をして歩いたことが新聞を見れば分かる。残念ながら、環境は選挙の争点にはならなかった。

実は、そのパイリンさんも2002年隠居前のマハディール首相がサバにやってきて折に和解。今回は与党連合に合流しての選挙。サバ州では与党連合が60議席中58席を占める圧勝だった。

某高官から聞いたとっておきの「カエルな政治家」のお話。
彼は、その1996年の事件で新与党にカエル飛びし、その後も政党を何回かホップし大臣の席まで獲得した御人。
今度の選挙で彼は、「私はカエルだ」と居直った上に、「でもこのカエルはいいカエルだ。みなさんに開発をもたらす」とやって大喝采を浴びていたそうな。彼も当然、再当選を果たした。

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