卒業式はハリーポッターの世界

2003/10/15
草野孝久
河合先生が名誉博士号の授与を受けたサバ大学の卒業式は、まるで中世のヨーロッパのような大時代的演出で行われました。

 完成したばかりのデワン・ベサール(大講堂)は5千人分の座席があり、思わず「チョーひろい」と言いたくなるような巨大ホール。卒業生たちは真ん中辺の座席にガウンを着て四角い大学帽をかぶり静粛に鎮座し、1時間近くも教授陣の入場を待ちます。ガウンと飾りのマフラーのようなものは学部ごとに違うツートンカラーです。これが、熱帯らしく黄色、赤、青と原色が多いので、ベージュ色の会場は色のさながら式典です。私は、表彰される学生の親たちがいるらしい前の方の席に案内されて開会を待ちます。河合先生の奥様は、中二階の位置に飛び出ているローヤルボックスで御覧になっていたとのこと。

 かなり待たされても、日本の若者たちのように大声でおしゃべりする者はなく、携帯電話も切られています。これは、おごそかな式典なのだと誰もが認知しているぞという雰囲気のなか、後ろの方でオーケストラの奏でる中世風のゆったりした行進曲に乗って、教授と助教授の入場です。彼等のまとっているガウンは学生たちのものより大きくカラフルで、帽子は学生のように角張ったものではなく、ふんわりと膨らんだ大きなそして色とりどりのかぶり物です。全員ゆっくりとステージの上に並びます。100人近い教授陣はこの後1.5日間続く式典の間中、席を立つことはできません。

最後に、学部長、研究所長、理事そのなかに河合名誉博士が入場です。服装はさらに大掛かりになり、帽子は教授たちよりさらに大きく高く羽やひもがついているものもあります。おおように威厳をつけてゆっくりゆっくりと歩き、壇上の一番前に座ります。最後に、名誉総長のサバ州提督、学長、理事長の3人が入場。提督が舞台の上真ん中にあるひときわ大きな椅子に座り、学長は大学のシンボルである飾りのついた50〜60cmの棒を捧げ持ち提督の前の台座に厳かに置きます。ようやく卒業式開会が宣言されます。

河合先生は、3時間は席を立てないと言われたので、トイレに行かなくても良いように、昨晩からいっさい水分をとらなかったそうです。それは、苦痛な時間でした。私は、河合先生の授与、博士、修士号の授与、理学部卒業証書の授与がすんだあたりでそっと会場を抜け出しました。午前の部は9;30から始まり600人ほどに卒業証書を渡し午後2時にようやく昼食の休憩に入ったそうです。2300人もの学部卒業生が一人ずつ壇上に上がり、提督から直に卒業証書を受け取るのです。大学を卒業すると言うことは、これほど重要で名誉があり、威厳を持ってその式典を行うものなのでしょう。日本では何十年も前に消えてしまった価値観です。

博士号は4人のみで、修士号を得たのは10数人です。この中には私たちの研究教育コンポーネントのCPで、熱帯生物学・保全研究所で修士課程を終えた者が一人いました。彼等は壇上に呼ばれ、研究の内容を紹介されてから、証書を授与されます。難行を修了したという満足感がしっかりと与えられる式典であると思います。

 河合先生に後で「どうでした」と印象を尋ねると、「まるでハリーポッターみたいだね」と奥様と大笑いなさってました。

上へ
 閉じる

JICA