BBEC
ボルネオの自然
バイオディーゼルの保全に与える影響

坪内俊憲(生息域管理コンポーネント)

サバの新聞にタビン野生生物保護区やダナム渓谷保護区の位置するラハダト郡で30万トンのバイオディーゼル生産が始まるとの報道がありました。また、この報道に前後して、日本の総合商社がマレーシアの企業とアブラヤシプランテーション開発に関する覚書を締結したと報道されました。記事はインドで大規模なプランテーション開発を計画し、そこで生産するヤシ油をバイオディーゼルとして世界に販売を目的にしているということでした。バイオディーゼルとは植物が作り出す油を処理してディーゼルエンジンを動かせる燃料として使用する植物燃料のことです。化石燃料である石油から作ったディーゼル油と異なり、大気中の二酸化炭素を植物が油として固着したものを使うので、温暖化対策になるといわれています。

でも、少し考えてみてください。化石燃料である石油ももともと生物が大気中の二酸化炭素を固着して作ったものです。大気中に大量にあった二酸化炭素を長い時間をかけて半永久的に地下に貯蔵したのが石油、石炭と呼ばれる化石燃料です。現代社会はその地下に固着されていた二酸化炭素を、燃やすことで大気中に放出する、熱力学で言うところのエントロピーを増大させることで成立しています。そして、長期間大気から取り除かれていた二酸化炭素が大気中に放出され、太陽から届くエネルギーをより多く大気中に蓄えて暖め、この数千年間安定していた気候を撹乱させているというのが地球温暖化問題と思います。

バイオディーゼルによってこの地球温暖化問題が軽減されるのでしょうか?保全の現場で働くレンジャーや野生生物官は保護区に肉薄してくるアブラヤシプランテーションとの調和に苦労しています。たぶん、南米ではアマゾンの森林に日々迫ってくる大資本、海外資本の大豆やトウモロコシプランテーションと保護官は日々戦っていることと思います。シンガポールで開催された持続可能なヤシ油円卓会議(RSPO)に参加していたインドネシアとマレーシアのNGOの代表は、もしバイオディーゼルが温暖化防止に有効なツールとして世界中で使われることになるとボルネオの森はすべて消えてしまうのではないかと危惧していました。温暖化防止に役に立つとしてバイオディーゼルが使われると多くの熱帯林が伐採され、プランテーションに変わり、大気中の二酸化炭素を半世紀ぐらい固着することができる森林が消え、日々生産されるヤシ油が日々燃やされ、日々大気中に戻っていく。できるだけ長い間大気中から二酸化炭素を固着させて取り除き、太陽から降り注ぐエネルギーを大気中にとどめないようにして、大気の温度を下げ、気候撹乱を減少させることが大事なのではないでしょうか。バイオディーゼル生産のために失われる森林のほうが、より長い期間二酸化炭素を大気から取り除くことができるし、生物多様性を保全し、人間が生活する有限生物圏を維持することができるのではないでしょうか。この問題について政府だけではなく、国内・海外企業やNGOなどのたくさんの人と具体的な議論する必要があると思います。

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