BBEC
ボルネオの自然
BBECプログラム最終年に向けた取り組みについて

松永龍児(チーフアドバイザー)

 ボルネオ生物多様性・生態系保全(通称:BBEC)プログラムの最終年に向けての状況を簡単に説明したいと思います。

 サバ大学熱帯生物学・保全研究所(ITBC)、サバ州公園局、同じくサバ州野生生物局、サバ州科学技術室の4つの主たる実施機関を中心に多くのサバ州政府関係機関等の協力を得ながら、これまで2002年から4年間協力が行われてきています。

 今までにマレーシア国内や日本国内で多くの新聞や雑誌に取り上げられ、サバ州の自然環境に対する意識はますます高まってきています。

 自然を守るためにはそこに住んでいる人が自らの力で保全の必要性を理解し、本当に守ろうという気にならないと守ることは絶対にできません。

 如何に学術的に貴重で生物の多様性や熱帯雨林の重要性を世界中の知識人が解いても、そこには人が住んでおりその人たちが利用しており、その人たちのものなのです。


国際会議には、海外も含め280名の参加者を集めた.

  サバ州おいては、30年前から多くの原生林が切り開かれ、経済活動に利用され、今もそれは続いています。原生林に近い形で保全されるのは約5%で、その他は生産林として2次林の状態で50%程度残され、その他はアブラヤシのプランテーションを中心とした農地等に変わってしまいました。

 この現実をふまえ、少しでもマレーシアの人が、自らの手で、多くの自然を保護することがサバ州そしてマレーシアの将来をどれだけ明るいものにするか考える力をつけてもらうことがBBECの狙いです。

(研究・教育) サバ大学の熱帯生物学保全研究所では、自然保護のベースとなる標本管理や研究が欧米中心に行われてきた現状を少しでも改善するように、兵庫県立人と自然の博物館と連携をし、標本データの管理用の施設やシステム、そして多くの教材がマレーシアのサバ州の人により作られるようになってきています。

 現在、標本データベースをまずサバ大学内で確立し、他の組織に広げることを計画しており、テキストも作られました。今後は大学のデータベースをより充実させて、世界各国からアプローチが可能として、それをサバ州の他の組織にも広げていくことが重要です。

 また、サバ州公園局と協力して、クロッカー山脈公園内に数カ所の永久調査区を設置し、定期的に観測する地点を作るとともに、大学での研究をいっそう進めていくことが期待されています。

 あとは、前述の仕組みを充実させるとともに、いかにサバの自然を保護し、開発するかサバ大学や研究機関がオピニオンリーダーとなっていくことが期待されています。

(公園管理)クロッカー山脈公園を中心に多大な成果が上がってきています。

 クロッカー山脈公園は、今から20年ほど前に、コタキナバル市内及び周辺のサバ州でも人口の多い地域の水源としての意義が高いこともあり公園として指定されました。しかし、世界遺産に指定されているキナバル国立公園のように特異な景観があるわけでもなく、土地も沖縄県の約1.2倍と広大なのでなかなか手を付けられずにいました。 

日本の協力で管理事務所やビジターセンター等の施設を設置するとともに公園の管理計画を検討することになりました。公園の施設が充実するにつれ、多くの利用客が訪れるようになり、認知度も高まってきました。

この広大な敷地を管理していくのは、非常に困難なチャレンジですが、地域の人と自然を管理していく方法を考えており、うまく行けばすばらしいモデルとなると思います。また、環境教育についても青年海外協力隊員を中心に公園周辺の郡と一緒になって進めており、徐々に成果が上がってきています。
 
(生息域管理) 野生生物局の生息域管理コンポーネントでも大きな進捗が見られています。セガマ河下流域が、新しい保護区として議会で承認された後、その周辺地域も、トラスト等で保護区に組み込む計画が進んでいます。

現在、この地域を含んだ住民主導の総合管理計画が検討されており、村人が名誉レイジャーとして保護区を守るとともに村落組織が中心で運営するエコツアー計画が実際に動き出しています。BBECも最終年度にかけて管理用船舶や管理棟等の施設をさらに充実させる予定です。

 これら地域を含んだ湿地域をラムサール条約に登録しようという機運も高まっており、ますます目が離せない地域になってきています。
 


統合的な保全区管理手法確立に向けて、SITEセミナー開催

(環境啓発)環境啓発コンポーネントも大きな成果が上がってきています。
教育、ジャーナリストのグループに加え、開発業者、政策決定者、NGOのグループも活動を活発化させており、サバ州全体で環境教育を考える枠組みを検討するところまで来ています。
 
(統合化) この2月に第4回のBBEC国際会議が、サバ大学で開催されました。サバ州からはムサ主席大臣、環境観光文化大臣、副大臣初め多くの来賓を向かえ、日本から炭谷環境省次官が基調講演で日本の環境政策を詳しく話して下さり、新聞にもその内容が掲載されました。この会議中で各コンポーネントの枠を超えた自然保全に対する取り組みが紹介され、BBECの活動も組織から地域を巻き込んだものにかわりつつあります。

 サバの人口が少ないという特異性から他の部署に干渉されずに、またせずに自然保全等が今まで行われてきていたわけですが、徐々に住民主体の地域保全が根ずきつつあるように感じられます。

 徐々にでも組織の垣根をこえた協力が行われるように少しでも協力できていければと考えています。

 専門家も新たに3名が来られ、前任者の努力を引き継ぎ、気持ちを一新
してサバのために取り組んでいくことになりました。

サバ州の自然を守り、生物多様性を保全するという困難なこの挑戦にサバの人々が自分で考え、自分達で持続可能な豊かな社会を目指す気運が高まってきていることをうれしく思っています。

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