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ボルネオの自然
クロッカー山脈公園の課題:土地問題と住民との共存

臼井 俊二(公園管理)

世界の国立公園は2つに大きく区分することができます。1つは営造型といってアメリカの国立公園のタイプ。もう1つは地域型。日本の国立公園がこのタイプに属します。

営造型国立公園は、保護したい場所をそのまま国有地としてしまい、全体をそっくり保護するものです。保護という面では優れています。しかし、国立公園の設立年代にもよりますが先住民の土地を有無を言わさず国有化してしまった例、国立公園の境界線まで開発が進み緑の孤島のように他の自然地域から隔絶されている例があります。

地域型国立公園は、私有地も国有地もまとめて公園に指定し、土地利用の仕方を法律で規定しています。日本の場合、特別保護区、第1種特別地域などに分けて、それぞれの場所でなにができて、なにができないかを決め、管理をしています。

保護の規制が強い特別保護区等の面積が小さい場合もありますが、全体としては土地利用の調和をめざし、世界の保護区管理分野で現在注目されている管理形態です。

クロッカー山脈公園はどうでしょうか。ここは営造型国立公園です。サバ公園法の下では、クロッカー山脈公園を管理するサバ公園局の特別の許可がない限り、公園内での生活活動は許されていません。ところが、現実には公園内に村落があり、人が生活しています。また、公園周辺に住んでいて、田畑が公園内にある人たちもいます。公園法と現実の間に齟齬があるのです。

例えば、公園内部にポリープのように侵入している村の場合、村と公園の境界線をどうするか、という課題があります。公園境界線を引き直してこの村を「公園外」としてしまう考え方があります。こうすれば公園法との齟齬はなくなります。しかし、一旦この方法を適用すると、皆がわれもわれもと境界線の引き直しを求めてくる可能性があります。結果、公園は蚕食されて全体の面積が減ってしまいます。

サバ公園局では日本の国立公園管理手法を手本にしようとしています。現在人が住んでいる地域を「Traditional Use Zone(名称はまだ仮のものです)」として、一定の規制の中で居住を許可しようという案を住民に提示しています。公園境界線はそのままで、公園内に村を残したまま「村の境界線」を正確に引いて、それ以上村の面積を増やさないように村人と合意し、「Traditional Use Zone」として公園法での「特別許可」で村を存続させるもの。こうすれば、公園の面積は変わりません。この案は、公園内から追放されるのでは、と恐怖にかられていた住民からも歓迎されています。しかし、この手法をそれぞれの村でどのように適用していくのか、という方法論がまだ確立していません。

公園の前身である森林保護区ができる前からあった村、森林保護区成立後にできた村、など村落の成立歴が違っていたり、電線が引かれ、社会資本が整った村、孤立して生活インフラがまったくない村など現状の違いもあります。これらの違いを勘案して、この手法を適用しないといけません。

現在、どの村とも具体的な話し合いはまだしていません。村人たちと話し合いの場を持ち、話し合いをすることの合意をまず取り付けてから、公園管理計画の概要を丁寧に説明します。その後に、土地問題について合意をしていくことを目指していきます。

道のりは遠いのですが、この問題を解決しない限り、周辺住民との軋轢は未来永劫おさまりません。

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