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ボルネオの自然
地球塾サバ校ダガット村教室で教わったこと Part2

坪内俊憲(野生生物生息域管理)

2003年、提案したボルネオ島サバ州東部にあるセガマ河下流域野生生物保全区の生息域地図を作るため航空写真撮影をしました。いつも晴れの紅海やモンゴルでの経験から、すぐに終わると思って臨んだ撮影でしたが、熱帯の森の航空写真を取ることは容易ではありませんでした。1億円以上もする航空写真撮影機を積み込み、土地管理局の航空写真課係長、野生生物局職員二人と私で乗り込み、すかっぱれのコタキナバル空港早朝6時30分に出発、一日で撮影が終わりそうなぐらい晴れていた道中なのにキナバタンガン野生生物聖域保護区に近づくころから雲がもくもくと上がってきて不安にさせられました。

案の定目的地のタビン野生生物保護区上空に広がるたくさんの雲。パイロットと航空写真課係長から今日の撮影は無理と言われて、すごすごとサンダカン空港に引き返しました。

30%以上撮影範囲が雲に覆われると、航空写真をとっても意味がありません。また、朝早くは斜めから差し込む太陽は色が変化する可能性があるため、十分に太陽があがってから航空写真を撮らなくてはなりません。

次の日は幸い10時ころまでに3分の1ほど撮影することができました。でも、その翌日は、サンダカンは晴れているのに、セガマ河下流域とタビン野生生物保護区上空は雲に覆われていて、断念。空港でボーっと空を見上げていたり、サンダカンのホテルで本を読んで過ごしました。結局、撮影時期を変えたりして、何とか2週間かけて450枚ほどの写真を撮りました。

一年365日のうち300日が曇りといわれるボルネオ島のサバ州ですが、セガマ下流域とタビン野生生物保護区周辺では特に晴れる日が少ないようです。航空写真課係長によれば森の多いタビン周辺はなかなか写真が取れないところですと教えてくれました。

高校だったか、中学だか忘れてしまいましたが、授業で地球の自転とコリオリの力が働いて、大気や海の流れができていると教わりました。赤道付近は地球で最も早く時速約1400kmで動いていて、空気は西へ西へと移動します。そして、コリオリの力が働かないので低気圧や高気圧ができないと勉強したように覚えています。日本では低気圧や、冷たい空気とあったかい空気がぶつかってできる前線で雨が降ります。でも、北緯5度付近のダガット村では、はっきりした低気圧や高気圧ができないのに午後4時くらいから雨が降ります。

タビンの森、ダガット村周辺の森の木々は土壌の栄養を水とともに吸い上げ、二酸化炭素と太陽の光を使って体を作りながら、葉っぱから水蒸気を出します。熱帯の太陽があがり10時ぐらいになると、スラウェジ海の表面が温められ、大気に水蒸気をたくさん供給し、自転によって西へ西へと進む空気の流れに乗ってボルネオ島の東側に当り、森からの水蒸気とともに上昇してたくさんの雲を作ります。

早朝、ダガット村は晴れることが多いのですが、午後4時くらいからほんとうによく雨が降ります。村の若者は雨の中で参加人数制限なし、ボルネオゾウの足跡だらけの広場で泥んこサッカーを5時から日没の6時半まで楽しみます。午後4時過ぎの雨はまさに自然の打ち水で、森や大地が急激に冷やされます。東京では人が打ち水をしなくてはなりませんが、ダガット村では地球が熱くなり過ぎないように打ち水をしてくれます。そして、夜になると木々の葉っぱからの蒸散がとまり、雲の発生が抑えられ、夜は南十字星が良く見える夜空を見ることができます。

夜、ワニの目や無数に集まる蛍を見に行くリバークルーズのときに雨が降っていることはほとんどありませんが、雨によって冷やされた森の風はとても冷たく、皆さんもっと暖かい服をもって着たらよかったといいます。

村の飲み水はすべて雨水をドラム缶にためて使っています。ほとんど定期的に降る雨を利用することが、井戸を掘り、水道パイプを引くよりも、費用対効果が高い水の利用方法だと感心させられます。だから、村の人は1週間雨が降らないと旱魃だと言い、ドラム缶の水が少なくなると困った顔をします。そして、旱魃でとっても暑いのでたいへんだ、たいへんだと口にします。といっても日本の熱帯夜のように寝苦しい夜になることはまずありません。太陽からのエネルギーはしっかりと周辺の森が吸収、利用しています。そして、ダガット村は大旱魃、でも30kmもはなれていないタビン野生生物管理事務所では大雨なんてこともあり、低気圧、高気圧ができにくい熱帯の局所的な雨を教えてくれます。

ダガット村に降る地球の自転、太陽と森の共同作業のいつもの雨が地球の営みと、なんとなく効率的なダガット村人たちの生活と考え方を教えてくれます。

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