BBEC
ボルネオの自然
地球塾サバ校ダガット村教室で教わったこと Part1

坪内俊憲(野生生物生息域管理)

私はこれまでフィリピン、インドネシア、サウジアラビア、キューバ、モンゴル、マレーシアなどで野生生物保全にかかわる業務をしてきました。いろいろな国の人と自然、人間の文化や社会にかかわりながら、野生生物保全を模索してきました。熱帯雨林からツンドラタイガ森林、砂漠に囲まれた紅海から海賊の海だったキューバのカリブ海まで仕事をさせてもらいました。苦しかったこと、楽しかったことたくさんありますが、自分の目の前で起こっていることが、学校で習ったことをつながって少しだけ地球を理解できた時、とてもうれしかったです。今振り返ってみると、私は地球を理解する塾、名付けて「地球塾」に通ってきたような気がしています。

モンゴルの−30度で国家認定ハンターと一緒にいったオオカミ捕獲調査では自分の吐く息が目の前で凍ってダイヤモンドダストになっていくのをみて感激しました。そして、−30度ではビデオカメラのリチウム電池が放電しなくなってビデオ撮影が不可能になるのを知り、化学反応に温度が必要なことを理解させられました。電池を自分の体温であっためておいて、撮影チャンスが来たらカメラに取り付けてすぐに撮影、電池の温度が−20度になったら撮影終了という方法で映像を残すことができました。ライフルの銃身に皮の手袋で触ったらすぐに凍り付いて、無理やりはがしたら手袋が破けてしまい、鉄の比熱を実感させられました。春先、モンゴルでは水が大変不足します。そこで、友人の家畜に水を与えるため、井戸の中に入って氷を取り出す作業を手伝ったととき、井戸の中の氷が私の思いっきり打ちつけた鉄のアングルバーを跳ね返し、圧力がかかって凍った水の硬さを知らされ、シベリアの地下の永久凍土層の固さが理解できました。モンゴルの森林は木の種類がとても少ないですが、土壌の水分が比較的高い谷間に樺類の森、それ以外にはカラマツ類の森と明らかに種が変わるのを見て、木と土壌水分の関係を理解できました。

キューバで海ガメの移動を衛星で追跡する調査をオーストラリアの研究者と一緒にしていたとき、海ガメが冷たい海の流れに当るとすぐに踵を返したのを知り、温度による動物の移動を理解できました。世界一の透明度を持つと言われるサウジアラビアの紅海の調査では、雨がほとんど降らないアラビア半島やスーダンのヌビア砂漠から栄養の供給がほとんど無いので褐虫藻から栄養を得ているサンゴが優勢な海であることが理解できました。その紅海のデュゴンの航空調査を行うとき、調査は午前10時までに終わらなければならないとパイロットにきつくいわれました。灼熱の太陽が裸の大地アラビア半島を照らして強大な上昇気流を発生させ、周りから空気を呼び込んでくるため10時以降は非常に強い風が地表近くで吹くので小型の飛行機での調査は危険であることを教えられました。調査開始が遅れて、4人乗りの翼が布で作られた軽飛行機で少しだけその強い風を経験して、砂漠での空気の流れを理解しました。

そして、今私が通っている私の地球塾サバ校ダガット村教室は毎回いろいろなことを理解させてくれます。ダガット村から新月の夜真っ暗闇のセガマ河をボートで移動していたとき、森からアブラヤシプランテーションに入ったとたん顔に当る温度が急激に上昇することで森が地球を冷やしてくれることが理解できました。太陽から照射されるエネルギーをたくさん森の木が受け止めて、二酸化炭素から木の体を作ります。地面に太陽の光が届くことはほとんど無く、地面は温められません。そして、木の葉から水分を蒸散させることで1グラム当たり2,256ジュールの熱を使ってくれます。だから、ダガット村に寝苦しい熱帯夜は無く、いつも夜はすごしやすく、長袖が必要なほど涼しいです。気象庁に提案して、熱帯夜という言い方をやめて東京夜、あるいは都市夜と言う名前に変えてほしいと思っています。

熱帯の森では虫が多く、大変なのでダガット村ホームステイを躊躇していた方が皆さん蚊の少なさに驚いています。村の家には蚊取り線香さえもありませんでした。熱帯夜と蚊に悩まされると信じて防御体制万全で望まれた方も、夜のすごしやすさと、蚊の襲来が少なかったのにびっくりしていました。熱帯では種の数はとてつもなく多いですが、同じニッチで生息するひとつの種が個体数を増加させることは難しいようです。ひとつの種の個体数が増加するためには、捕食者との戦いに勝たなくてはならないのですが、あまりに種が多く、蚊だけが個体数を増やすことが難しく、網の目が非常に細かく、複雑に絡まった種と種が作り出す熱帯雨林生態系を実感することができます。殺虫剤を大量に環境に撒き散らして、蚊とともに捕食者も殺し、網の目を大きくしてしまうと、生態系のバランスがおかしくなり、繁殖力が強大で、急速に数を増やす能力高い蚊が増加してしまいます。コタキナバル市内の我が家はいつでも蚊に悩まされていて、人間によって生態系が壊された結果、蚊が増えことも教えてくれます。こんな地球のことを教えてくれる私の地球塾ダガット村教室にたくさんの方が地球の勉強に来てくれるような仕組みを作っています。

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