BBEC
ボルネオの自然
季節の話 その1:冬鳥がやってきた

臼井 俊二(公園管理)

ここ、ボルネオ島のサバにも冬鳥がやってきました。「冬鳥?」と不思議に思う方もいらっしゃるでしょう。北半球に冬が訪れると、「避寒」のために北から東南アジアに渡ってくる鳥がたくさんいます。その代表選手が前回のメールマガジン(第73号)で三戸森さんが書いていらっしゃるツバメです。

ツバメは日本をはじめ北半球の主に中緯度地方で子育てをして、北半球に冬が訪れる前に南の暖かい国に渡っていきます。兵庫県で足環を付けられたツバメがクロッカー山脈公園近くの町で再捕獲された話は以前のこのメールマガジンに書きました。日本とBBEC保全対象地を繋ぐ証人です。

今回は、コタキナバル市で見たツバメ以外の冬鳥についてお話します。コタキナバル市の北に下水処理場があります。「臭くて汚いところ」というイメージしかなく、一般の方にはあまりなじみのない場所です。バードウォッチャーにとっては、いろいろな鳥(特に水鳥)を見られる場所としてちょっと訪ねてみたい場所の1つです。今年の8月頃はほとんど鳥がいなかったのですが、最近はダイサギ、コサギの数が増え、8月にはいなかったセイタカシギやタカブシギが見られるようになりました。アジサシの仲間も処理池の上を飛んでいます。

私の住んでいるアパートは海岸に面していて、13階建てです。先週の土曜日、朝から雨で嫌な天気だったのですが、フッと窓の外を見るとハヤブサが1羽横切っていきます。あわてて、ベランダに出てその行く先を確認しました。隣の棟の13階の窓のひさしに止まって、雨宿りをしていました。サバに住んでいて渡りをしないハヤブサもいますが、私が見たハヤブサは色が白く、北から渡ってきた鳥のようです。ハヤブサにとっては、海岸にある崖で休んでいる、という感覚なのでしょうか。それから雨が降るたびに同じ場所で雨宿りをしています。ただ、窓のひさしに止まっているので、双眼鏡で見ることは控えています。「JICA専門家 覗きで逮捕」という記事は見たくありません。

彼ら「冬鳥」も来年になればまた北に帰っていきます。
どうして渡りをするのでしょうか。ずっとサバにいれば、暖かいし、餌だって食べることはできるような気がします。それを、わざわざ何千キロも旅して、死の危険を冒してまでして北に戻り、秋が来たらまた南に旅する。こんな渡りをなぜするようになったのか、未だにいろいろな説があって、説明の決定打はないようです。

渡りのルートについても、まだわかっていないことがたくさんあります。先ほど書いたように、今までは鳥を捕まえて足環をつけ、再び捕まえて足環が着いていればどこで最初に捕獲したかがわかり、どことどこの間を渡っているかを解明していました。しかし、この方法は労力の割には結果を得られません。渡りのルートも直線でしか結べず、本当にどこをどう通っているのかがまったくわかりませんでした。

1980年代後半から、電波発信機を鳥に装着して人工衛星に電波を送信し、リアルタイムで鳥の位置がわかるような調査が始まりました。ツルの仲間などの大きな鳥については、いろいろなことがわかるようになってきました。しかし、電波発信機は小型の鳥にはまだ大きすぎて、この方法は使われていません。

こんな渡り鳥を保護するためには、国際協力がかかせません。例えば、ツバメを繁殖地の日本で保護しても、サバなどの東南アジアに来るまでの経路地の環境が悪ければサバに着く前に死んでしまうかもしれません。また、日本や経路地で保護しても、サバの環境が悪くなれば無事に越冬が出来ず、次の年に日本に帰ってこないかもしれません。さまざまな国・地域で、さまざまな国の人たちが協力して自然保護活動を実施していく理由の1つがここにあります。

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