BBEC
ボルネオの自然
渡り鳥とクロッカー山脈公園

2005/3/2
臼井俊二(国立公園管理)

 北半球の冬になると、日本を含めた東アジアなどからサバ州にはいろいろな鳥が渡ってきます。クロッカー山脈公園では、キビタキやメボソムシクイ、ツバメが観察されています。今回はツバメの話です。
 ツバメは日本に4月から5月にかけて渡ってきて、8月中旬からいなくなり、10月にはほとんどの地域で見られなくなってしまいます。日本では軒先に巣を構え、雛を育てます。そして日本を離れ、サバなどの東南アジアに渡っていくのです。
 サバではどんな生活をしているのでしょうか。クロッカー山脈公園に来てみると、昼間は食物を探して公園の上空を飛び回っているツバメを良く目にします。夜はどうしているのでしょうか。一般に巣は雛を育てる場所で、サバのような越冬地では巣を構えません。ツバメの場合は集団で塒(ねぐら)を作ります。日本では街路樹にムクドリがたくさん集まって夜を過ごし、大きな声で鳴き、しかも糞をたくさん落とすので新聞に掲載されることもあります。このような集団で夜を過ごす場所を塒と言います。
 クロッカー山脈公園の本部があるケニンガウ郡、その中心都市ケニンガウに塒の1つがあります。2月25日に見てきました。街の中心にある駐車場の何本かの街路樹にたくさんのツバメが集まっています(写真:小林浩さん撮影。写真中の白い点はツバメのお腹の白い色)。日が落ちたころ(午後6時半ごろ)、街の上空にたくさんのツバメの姿が見られました。そして10分もたたないうちに、街路樹のすぐ上を大きな群れになって飛び回るツバメを確認。20分間ほどは枝に降り立っては飛び去る、といった落ち着かない感じでした。午後7時には皆好きな場所が見つかったのか、大きな動きはなくなり、グチュグチュといった声を出しながら枝に止まっていました。
 そのあとで、青年海外協力隊員の岩田周子さんが塒を以前見た場所にも行ってみました。今回見た塒のすぐ近く、大きな道路のすぐ横にある道路沿いに延びた駐車場にある電線にたくさんのツバメが羽を休めていました。
 1999年12月に日本の山階(やましな)鳥類研究所・尾崎清明さんたちがケニンガウでサバ州野生生物局と一緒にツバメの標識調査を実施しています(須川恒:「アルラ26号」)。標識調査というのは、野鳥を捕獲して金属製の足環を付け、渡りなどの行動を研究することです。当時ケニンガウには4箇所の塒があり、そのうち1箇所では約5万羽のツバメが数えられています。全体では10万羽近いツバメがケニンガウで夜を過ごしていたようです。今回は数を数えることはできませんでしたが、たくさんのツバメが飛び回る光景は圧巻でした。
 尾崎さんたちは何回かサバで標識調査を行っていて、1997年にここケニンガウでおもしろい発見をしています。1997年12月15日に1羽のツバメを捕獲し、その足にはすでに足環が付いていたのです。その鳥は同じ年の6月10日に兵庫県加古郡で村田健さんによって標識されたツバメだったのです(山階鳥類研究所資料)。
 このように偶然ではありますが、サバ、クロッカー山脈公園と日本が直接結びつく「生き証人」が見つかっています。これを題材に環境教育活動ができないでしょうか。日本人が冬のツバメの生活を知らないように、サバの人たちはツバメの夏の生活、巣も雛も見たことがありません。このような意識のギャップを埋めながらかつ利用しながら、ツバメの保護には日本とマレーシアの協力が必要であることを訴えたいと思います。
 今年1月にはケニンガウ郡役場に青年海外協力隊・環境教育隊員の喜安明子さんが赴任してきました。BBEC・環境啓発コンポーネントの力も借りて、マレーシアのカウンターパートとともに環境教育活動を実施したいと考えています。

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