BBEC
ボルネオの自然
ボルネオピグミーエレファント報道について

2004/12/24
坪内 俊憲

ボルネオ島に生息するアジアゾウは人によって16世紀、17世紀に持ち込まれたものであるという説と古来から生息していたという説がありました。

そこで、コロンビア大学環境研究・保全センターの研究者がWWFマレーシアとサバ野生生物局の協力を得て、ボルネオ島のアジアゾウの遺伝子をアジア各地のゾウの遺伝子とを比較する研究を行いました。彼は、遺伝子分析の結果からボルネオ島に生息するゾウは更新性(新生代第四期の前半:200万年前から約1万年前まで)の中期から後期に移動し、遺伝的に隔離されてきた個体群であることを示めしました。そして、ボルネオに生息しているアジアゾウは進化上貴重な隔離群であると報告しました。
(http://www.pubmedcentral.nih.gov/articlerender.fcgi?artid=176546#N0.167)
このことにより、人間によって持ち込まれたという説が否定されました。

研究結果は保全政策を推進するため貴重なもので、州政府としても喜んでおりました。

しかしながら、あるNGOがボルネオピグミーゾウという名前をつけて広報をしたため、一部新聞では新種発見、あるいは新しいゾウの亜種発見と報道されてしまい、研究結果を報告した研究者も野生生物局は困惑しております。今、今回の研究報告と新聞による行き過ぎた報道から、今、野生生物局ではピグミーゾウという名前で呼ばずに、ボルネオ島に住むゾウということで出来るだけボルネオゾウと呼んでおります。

ゾウを好きな方はボルネオゾウを一目見れば他のアジアゾウといろいろ違うことに気がつきます。体は小さく、まるっこく、地面に届きそうなほど長い尻尾、まっすぐのびた牙、そして、非常におとなしい性格。スリランカでは年間30人ほどがアジアゾウによって殺されていますが、サバではほとんど報告がありません。といっても体が大きいので近くに来るととても怖いし、自然環境に与える影響も少なくありません。

BBEC対象地のであるタビン野生生物保護区、セガマ河下流域、キナバタンガン・サンクチュアリーはボルネオゾウが多く生息する地域で、人間の活動と自然保全を実施していく上で大きな問題となってきています。植えたばかりのアブラヤシをすべて食べてしまったり、村の人たちが育てている果物、野菜を根こそぎ平らげていきます。昨年はセガマ河下流域のティドン村に40頭のゾウが数日入り込み、村の果物はすべて食べられてしまいました。幸い、性格がおとなしいため人に被害は出ませんでしたが、レンジャーによる観察からボルネオゾウの数は急激に増えており、生息域管理実施上とても大きな問題になりつつあります。キナバタンガンで野生生物局とフランスのNGOが実施しているオランウータン保全プロジェクトにおいてもWildlife Conflict Unitを組織して、ボルネオゾウによる被害を最小限に食い止めるべく活動しております。

また、小さな個体群で長い間隔離されていたため遺伝的な研究も継続して行う必要があり、野生生物局と広島県福山市立動物園との協力による人工繁殖の研究も始まろうとしております。世界中の皆様にボルネオゾウについて間違ったイメージを与えてしまっている短絡的な報道は研究者にとっても、保全行政にとっても困ったものですが、これをきっかけに皆様からボルネオゾウの保全管理に協力いただけることを願っております。

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