BBEC
ボルネオの自然
シオンちゃんのダンゴ虫

2004/04/18
草野孝久

  友人の娘シオンちゃん。クロッカー山脈公園マフアの滝周辺で大きなダンゴ虫を見つけて大喜び。


 でも、それは厳密に言うと日本のダンゴ虫とはまったくちがうタマヤスデ(Oniscomorpha: 英名pill millipedes)の仲間です。この仲間は、熱帯雨林のなかでよく見られます。湿ったところを探してみて下さい。大きいものは長さ10cm以上、丸まったときの直径は4cm以上にもなります。

 タマヤスデたちは、葉っぱなど植物が死んだものを食べます。彼らが消化したあとの糞は森の土になって、さらに微生物に消化されて植物たちの栄養源になります。

 熱帯の森の土壌(栄養のある土)は、日本など温帯の森のように深くはなく、せいぜい40cmほど。そのため木々は深く根を張らず、浅いところの栄養素を吸収しやすいように根を横に広げて立っているものもあります。

 枯れ葉や植物そして動物の屍骸は、地上にいるタマヤスデの仲間やたくさんの昆虫、微生物たちによって消化され、横に広く張った木々の根に吸収されます。タマヤスデは、自分の巣も自分達の糞で作り卵を産みつけると言います。

 熱帯の森の栄養のほとんどは地上にあります。これが一度失われた熱帯林の復元が難しい理由の一つです。いろんな植物と昆虫、ほ乳類そして微生物などの多様な生物が戻ってきて、その関係を作り直さないと、熱帯雨林は成立しません。

 タマヤスデは黒と茶色の混じった飴色で、持った感じも堅くて質量があります。まるで高価な宝石かアンティックのようです。ポケットに入れて持ち帰りたい気持ちは分かりますが、どうか、もと有ったところに返して下さい。彼らも森の成立のためにしっかりした役割があるのです。持っていっても、やがて死んでしまいます。
 (野生の生物をサバ州外に持ち出すためには、野生生物局などの許可が必要です。無許可で持ち出そうとするところを空港で見つかると、法により罰せられますのでご注意下さい。死んだ標本でも同様です。

タマヤスデであろうと何であろうと、シオンちゃんにとってはそれは大きな大きなダンゴムシ。きっと、日本に帰ったら幼稚園の仲間たちにも自慢したんでしょうね。もう忘れてしまったかな?こういう幼い時に体験した野生が彼女の心にずっと残って、大人になっても自然を大事に思える人になってくれると嬉しいですね。


 彼女がタマヤスデを手のひらにのせて得意げに見せている写真は、地元の環境ジャーナリストに高く評価されました。「これは生物多様性を象徴するような写真だ」というのです。ご両親の了解がもらえましたので、BBECプログラムの活動でもいろいろと使わせていただこうと思います。

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