BBEC
ボルネオの自然
セガマ河下流域生物調査の痛い思い出

04/01/26
青年海外協力隊(生態調査) 田仲 謙介

 私は青年海外協力隊の「生態調査」隊員としてBBECプログラム対象地域のタビン野生生物保護区で、2003年の5月より活動しております。

タビン野生生物保護区の北側に位置するセガマ河下流域において2003年9月14日から28日までBBEC研究教育コンポーネント主体で実施された生物調査に参加しました。調査中に経験したすごく痛い思い出を報告させていただきます。

痛い思い出の原因はジラパイ(jirapai:写真)と言う植物でした。調査期間中ずっと、無数にいる蚊よりも、ヒルよりも、私はこの植物に苦しめられることになりました・・・・。

 この植物、別にボルネオの自然豊かな環境の中でなくても、どこにでも生えていそうな植物のように見えます。けれど、この植物の葉に触れるだけで針に刺されたような痛みがします。さらに悪いことに、その痛みは触れた時のみでなく、ほぼ一日持続します。持続的な発展ではなく、持続的な痛みを触れた人にもたらしてくれます。

 サバ大学の研究者とともに植物調査に参加されていたJICAの高野専門家によりますと、目に見えない大きさの細かいトゲが生えていて、そのトゲに刺激物質を蓄えているそうです。人が触れるとトゲから刺激物質が入り、持続した痛みの原因となっているとのことでした。悪いことに、今回調査では行った森の中では極普通に見られる種で、しかも腰から胸の辺りの高さで葉を広げているものですから、よほど注意していなければ毎日触れてしまいます。私は鳥の調査が主体ですので周りの植物に気を配っている余裕がなく、調査期間中ずっと持続的にとげの攻撃にさらされることになってしまいました。

 タビン野生生物保護区での調査中、網にかかってしまったコウモリをはずしているときに強く噛みつかれてしまい、すわ、狂犬病の予防注射をしなければ、と皆様を巻き込んで一騒ぎさせてしまいましたが、今回は調査期間中一人持続的な痛みに見舞われるという事態になってしまいました。

 痛みを伴う動植物の方が人の記憶の中では鮮明に残っていきます。前回、私の指に鋭く噛み付いたコウモリの顔を今も忘れませんし、そのおかげで少しコウモリに興味がわいてきました。今回のセガマ生物調査ではジラパイによる痛みが思い出となりました。

 しかし、いまだにはっきりと植物を同定できません。あまりにもその辺に普通に見られる植物で、そこら辺にあるものと同じような表情をしていたからでしょう。なので、次に調査に行ったときも、また、この持続的痛みに見舞われることを覚悟しなければなりません。でも、一緒に行った現地のティドン族の人は一瞥で区別し、よけて森の中を歩いていきます。彼らの識別能力に感服、尊敬するとともにサバの生物調査では新米の私が鳥だけでなく、生態系を構成しているさまざまな動植物を彼らと同じように識別できるようになるのはいつになるのかな、とセガマ調査の痛い思い出とともに考えさせられてしまいます。

 もっと、もっと彼らと一緒に森に入り、彼らの識別眼を少しでも吸収したいと思っています。

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