BBEC
ボルネオの自然
マレーシア国サバ州の自然保全への国際協力

草野 孝久

ジャングルという言葉で日本人がまず思い浮かべるのは、ボルネオの森林でしょう。かつての英領北ボルネオ、つまり今のサバ州と言えば、世界的にも多様な生物が生きる熱帯雨林の象徴です。

 地上60〜70mの高さで波打つフタバガキ科の樹冠の下は、昼なお暗き密林。直径2メートルもの樹幹を、長く伸びる板根が支えています。高さ2メートルをこえる葉と深紅の花が、ショウガだと聞いて初めて見る人は驚きます。ランは、無数の色と複雑な形、数ミリから数センチまでの大きさの組み合わせ、葉型の違いの多さは何度見ても同じ仲間とは思えません。巨大なラフレシア、ウツボカズラなど食虫植物の形態(かたち)と生態(生き方)には興味がつきません。大きな葉と太い茎のツタ類。巨木に寄生する植物群は無数に見えます。

 1本の樹には、何百何千種もの昆虫たちが棲んでいます。それこそ、まだ名前もついてないのが無数にいるのです。地上にも、巨大ダンゴムシが直径5センチにまるまっていたり、長さ20センチを越えるヤスデがうねうねと歩いています。

 そんなジャングルの中を流れる川の両岸は野生動物の宝庫です。

 往く舟を眺め下ろす大きな鼻と太鼓腹のテングサル。毎日新しいベッドを樹の上に作るオランウータン。リーゼント頭のリーフモンキー。地面にいるのは悪たれガキのグループみたいなカニクイサルたち。川辺の森は、サル仲間がいっぱい。うまいこと棲み分けています。
ゾウたちは、木を倒しおいしい新芽を食べ、集団で川を渡っては川縁をこわしてゆきます。そそくさと逃げるワニ。立ち上がって見送るカワウソの夫婦には、ぶりっこギャルでなくとも、「ウソ、ちょうカッワイイー」と黄色い声で叫びたくなります。真っ赤なリーゼント頭のサイチョウ。それこそ矢のように飛んでいくダーツ。ピーピー、ビーンビーン、真夜中の大合唱はカエルたちです。

 ボルネオ島は、地球上に12ある最も生物の多様性が高い地域の一つです。いまだ名前の付いてない生物は数十万〜数百万種とも言われます。

 豊かな生態系はまるで地上の楽園「エデンの園」のようです。永いあいだ、多様な民族と多様な生物が共生する穏やかな暮らしを慈しんできました。しかし、これまでの木材の切り出しと開発で森はどんどん消えていき、今や私たちがイメージするジャングル、たとえば上に紹介したようなシーンに出会えるのはわずかの地域だけになってしまいました。

 私たちのチームは、「自然を知り、賢く利用し、自然資源(生物多様性)の維持と社会経済の発展が両立できる」仕組みを再びサバ州で回復する計画を、日マ政府間の技術協力で支援するために派遣されています。

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