BBEC
ボルネオの自然
村落と野生生物共存型の新保全地区設置に向けた動き

2003.9.24
草野孝久

サバ州第2の大河川セガマ河の下流域は、流れ込む東海岸近くにあって、豊かな川辺林、湿地林、マングローブ林、ニッパ林という多様な生態系が、タビンとクランバという2つの野生生物保護区をでつないでいます。この地域には、オランウータンやテングサルに代表される希少な霊長類、アジアゾウや多様な水鳥などがまだ多く生息し、以前より専門家から保護の必要性が訴えられてきました。絶滅の危惧されるスマトラサイやティンバダウ(野生牛)の生息も期待されています。

この地域には人口300〜400人の少数民族ティドン人の村が3つあります。

セガマ河は中流域から開発が進み、今ではアブラヤシのプランテーションが下流域にも拡がり、マングローブ保護林との間に挟まれた大型動物の生息域は年々減少しています。ティドン人たちの収入源である川エビをはじめとする魚類の収穫量は激減し、生活物資であるラタンや木材、薬草などが周辺の森から減少しつつあるため、既に保護区となっている区域に立ち入り不法に調達しなければならなくなっています。また、ゾウ、サル、イノシシなどの大型動物が村人の栽培する農作物を荒らす被害も年々増えています。ティドン人は以前のような自然の恵みに依存することが難しくなってきたことや、貧困度が増し将来に不安を訴えています。

こうした状況に対処するため、私たちの協力する生息域コンポーネントでは、この地域3,500haあまりを生息域保全地域にする活動を展開しています。サバ州野生生物保全条例に基づき、保全地区としてこの2月に政府に申請され、現在関係各機関での検討が進み閣議にかけられるのを待っています。

単なる動物の保護区ではなく、現住民と生息域の双方が共存できる形で保全(保護し賢く使う)するのが狙いです。このタイプの保全区はこれまで、1家族が生活する小さな島で施行されたのみで、この規模の人口と面積を抱える地域では初めての試みです。

主だった村人と野生生物局との対話が進み、8月には社会経済調査を実施し、現在、セガマ河の北側で生物学的調査をサバ大学やNGO、日本の研究機関などの連携で実施中です。この地域に科学調査が入るのは初めてのことで、生物多様性が少しでも明らかにすることが目的です。私も先週現場に入ってきました。かなりの湿気でこれまでの野外調査の中ではベースキャンプの環境はもっとも厳しいところです。明日再び現場に入り、調査の結果と保全の重要性の村人むけ展示会を開きます。科学技術室長や新聞記者にも現地入りしてもらい、実情の理解と保全の必要性の広報を促進する計画です。

上へ
閉じる

JICA